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大塚家具、すべてシナリオがあったかのような急回復 類いまれな経営継承の成功事例

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大塚家具ショールーム(「Wikipedia」より/Itasan)

好調を維持する新生・大塚家具

 大塚家具の業績が好調だ。同社は経営権をめぐる父・大塚勝久元会長と娘・久美子社長の対立が世間を騒がせていたが、3月27日の株主総会で久美子社長が勝利し“ノーサイド”を宣言して内紛に終止符を打った。

 一連の経営混乱によって迷惑をかけた顧客に対しては、すぐさまお詫びの意味を込めて「新生・大塚家具『大感謝フェア』」を開催し、最大50%オフとなるセールを実施。セール初日の4月18日には久美子社長も店頭に立つなど話題を呼び、東京・新宿店には1万人を超える顧客が押し寄せ、大盛況となった。

 セールの目玉は、「935(クミコ)」にちなんだ93万5000円の高級寝具セット。各店10セット限定で用意されたが初日に完売するなど、フェアは予想を大きく上回る反響で、当初4月30日までだった期間が5月10日まで延長された。

 このフェアの成功により、5月の月次売上高は前年同月比170%を記録。セール終了後も引き続き好調を維持し、7月1日に発表された6月の月次売上高は前年同月比149.6%と、久美子社長率いる「新生・大塚家具」の上々の船出となった。

 振り返れば最近まで大塚家具は、極度の業績不振にあえいでいた。消費増税前、駆け込み需要のあった2014年3月には前年同月比133.4%の売上高を記録するも、同年5月からは前年割れが続いていたのだ。そんなさなか、7月には取締役会で経営方針の違いから久美子社長を解任し、勝久元会長が社長を兼任する決議が採択された。しかしその後、今年1月には再び久美子氏が社長に復帰し、勝久会長との2人代表体制に戻るなど、同社の経営は迷走を続けた。

 業績不振から脱却するために、従来の高級路線を強化して乗り切ろうとする勝久氏と、これまでの高級路線から大きく方向転換してより気軽に購入できる品揃えを充実させたい久美子氏の経営方針は平行線をたどり、その溝が埋まることはなかった。そして、ついにはお互いを公然と批判するなど、争いは混迷を深めていったのだ。

 この父娘による大塚家具の内紛劇は、メディアでも大きく取り上げられ、両陣営の一挙手一投足が大いに注目を浴びることになる。特に株主総会での勝久氏陣営と久美子氏陣営による株主の委任状を奪い合う激しいプロキシーファイトが繰り広げられた模様は、毎日のようにテレビや新聞で大きく報道され、良くも悪くも大塚家具という名前が世間に広く知れ渡るきっかけとなった。

 株主総会では、久美子氏がおよそ60%の支持を取り付け、辛うじて勝利を収めたものの、その代償は大きく、業績に暗い影を落とすことになる。株主総会の内紛劇が大きくクローズアップされた15年3月の大塚家具の月次売上高は、前年の駆け込み需要の反動があったとはいえ、前年同月比62.2%と4割近い落ち込みを記録して、一気に経営は抜き差しならない状況に追い込まれた。