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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

財政破綻で起こる恐ろしい事態 物価高騰、失業者増、給与減…平時の緊縮財政はプラス大

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト

財政破綻が国民に及ぼす影響

 財政破綻すれば、そこに暮らす国民も甚大な影響は避けられない。まず、国債の価格が下がり金融機関の経営が悪化すると、金融機関が融資に対して過度に慎重になり、クレジットクランチが起こることになる。そうなると金融機能がマヒし、貸し渋りや金利高騰が起きる。すると設備投資は激減し、銀行から資金を借りにくくなるため、個人でも住宅や車などをローンで購入することが難しくなる。

 また、変動金利で住宅ローンを借りている場合は、金利高騰の影響を直接受けることになる。住宅ローン金利を払えなければ、通常は住宅を手放すことになるが、このような状況で買い手を見つけるのは困難になるため、自己破産に陥る場合もある。

 こうして不況が進み、採用も減少する。職を維持できても残業カットやボーナス削減などで給与削減は避けられない。倒産企業も増えるため、失業者が巷にあふれることになる。さらに通貨の下落が進行するため、食料品やエネルギーなどの輸入物価が上がる。給与削減や失業が増加する中で、追い打ちのように生活必需品の価格が上がるため、家計は非常に苦しい状況に陥ることになる。そこで、通貨価値の下落を防ぐために金融引き締めを余儀なくされると、政府や民間部門に資金が回りにくくなり、資金繰りひっ迫がさらに景気の足を引っ張る。
 
 政府も極端な緊縮財政をやらざるを得なくなる。医療・福祉・教育・公衆衛生などの公共サービスの質は相当悪化すると考えられる。財政の引き締めは景気悪化に拍車をかけるため、株価や地価などが下がり、個人の資産が目減りする恐れがある。

 こうして加速度的に事態が深刻化し、金融機関の経営に対する不信感が広まると、預金の取り付け騒ぎなどが起き、それに対して預金封鎖のような措置が取られるようになる。銀行に預金があっても十分に引き出しができなくなり、生活がひっ迫する。

 以上が想定される最悪のケースだが、財政危機が起きても必ずしも事態がここまで深刻になるとは限らない。先に説明した緊縮財政やマネタイゼーション、IMF支援を実施することで深刻な事態を防いだ事例は数多くある。

 なお、財政危機の際には、経験則的に通貨の下落、物価上昇、金利上昇といった3つの経済現象が急速に起こるが、これらの現象はデフレ脱却の際にも緩やかに起こる。具体的には、デフレ脱却のために中央銀行が量的緩和政策を行い、紙幣が増えれば通貨は下落する。そして、デフレ脱却に向かえば物価も上がることになる。また、物価が上がれば期待インフレ率の上昇から長期金利にも上昇圧力がかかる。したがって、筆者自身は日本が財政破綻をするとは決めつけていないが、もしものために備えることは無駄にならないと考えている。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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