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ソニーは「つまらない会社」に成り下がったのか 「遺産相続」ではなく「新しい財産」を築け

文=長田貴仁/岡山商科大学教授(経営学部長)/神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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 前出の評論家は、主にAVC製品を対象にメディアで論じている有名人である。それゆえ、財務にはあまり興味がなかった点を割り引いても、復活を期待しているソニーに対してワクワク感を求めていたようだ。

 他社のスマホ向けに、イメージセンサーのような部品が活況を呈している現況は、ソニーの復活にとって好材料であることは否めないこと。BtoC商品を主な評論対象にしているこの評論家も、BtoB事業に傾倒することが何も悪いとは言っていない。では何が「つまんなかった」のか。次の吉田氏の発言を聞けば、なるほど「つまんない」と納得できる。

「いわばソニーらしい商品、ソニーの強みを生かした製品が出てきているとは思う。例えば、センサーの強みを生かしたカメラの領域では単価も上がっており、平井の肝いりである交換レンズのラインナップも揃ってきた。カメラ自体は成長市場とはいえないけれど、その中でポジションをとっていく。付加価値を上げていける製品は出てきている」

 一銭でも稼ぎたい現在のソニーにとって、当面の食い扶持を稼ぐ経営戦略は悪くない。ただし問題は、「先輩たちが基礎を固め、成長軌道に乗せた遺産」で生きている感じがしてならないから「つまんない」のである。つまり、「新しい事業」が日の目を見ていないといえよう。

 ソニー不動産の設立、自動車用部品事業の強化など、一見して平井社長も新しい種をまきつつあるように見える。しかし、それもアングルを少し変えて見てみると、金融、イメージセンサーといった過去の事業の蓄積をもとに対象市場を変えたリロケーション(立地転換)である。現在、リロケーションは日本企業がとるべき経営戦略として注目されているが、本気で持続的に高収益を創出しようとするのであれば、「平井世代」においてイノベーションを実現し開花させることが求められる。

「新事業創造」による継承

 そもそもソニーが長らく低迷していた背景として、「新事業創造」による継承がうまくいっていなかった点が指摘できる。世襲(同族)企業が子息に後継させる場合、子息が失敗するリスクを最小化する条件は、後継者(経営者)として育っていることと、成長軌道に乗っている事業が現存することだ。

 この点、ソニーは後継者の育成で成功を遂げたとはいえない。そして、新しい成長商品がタイムリーに生まれず、親の遺産を食いつぶして生きてきた。ブラウン管テレビの成功に酔い、液晶テレビで後手に回ってしまった。その結果、ブラウン管から薄型への移行期を、ブラウン管テレビを平面化するという改善でしのごうとした。ここに急激な技術革新の波が想定以上に速いスピードで津波のごとく押し寄せてきた。そこで、同社は液晶パネル製造でサムスンと提携するなど、救命ボートを出したのだが、うまくいかず溺れてしまった格好だ。

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