地方路線バス、驚異の精密運行 秒単位のデータ収集、アンケート調査…3年で事業再建
第二に、データ収集だけでは得られない顧客ニーズをアンケートで収集している。それも、短期・中期・長期の3種類のアンケートを組み合わせて行っている。車内に設置したポストカード式アンケート(日々の収集)、ダイヤ改正についての評価アンケート(年に一度)、地域住民アンケート(3年に一度)の3種類だ。
第三に、運行コストの可視化では、コスト管理の単位をバス1台や路線全体ではなく、1キロ、1分で行っている。そうすることによって、どこに問題があるのかが明らかになるのだ。
以上の3つに加えてイーグルバスが行ったのが、改善プロセスの可視化だ。イーグルバスは、これを「PDCA3年改善モデル」と呼んでいる。1年目に可視化を実施し、問題点を抽出する。2年目に最適化ダイヤで運行し、利用者の評価を得る。そして、3年目に改善したダイヤで運行する。この改善プロセスを繰り返すのだ。このように、改善プロセス自体も可視化したことが、イーグルバスの大きな特徴である。
こうした取り組みによって、イーグルバスは利用者を25%も増やすことができた。事業を再建する際、コスト削減だけでは限界があり、顧客を増やす努力が不可欠だ。
そのためイーグルバスは、バスはダイヤ通り運行しないという「常識」に挑戦し、データを収集して現状を正確に把握し、事業の改善につなげた。決して、最先端の技術を導入したわけではなく、いわゆるビッグデータ活用の設備投資をしたわけでもない。身の回りにある技術を導入し、データを生かす視点に工夫をこらし、スモールデータを見事に生かして成果を上げている。
次回は、タイムズ24という駐車場事業を営む、パーク24のデータ活用についてみていく。2015年5月22日付日本経済新聞に、パーク24の駐車場事業が8%の減益になったことが報じられている。その要因として、「駐車場の稼働率が前年同期を0.2ポイント下回る44.3%にとどまった」ことが挙げられていた。
さて、読者のみなさんがパーク24の経営者なら、どのくらいが理想的な稼働率だと思いますか? また、そもそも稼働率をどう定義しますか? 次回までに考えてみてください。
(文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営専攻>教授)
※イーグルバスに関する参考資料
(1)『サキどり』(NHK)2013年1月20日放映
(2)『日経スペシャル ガイアの夜明け』(テレビ東京系)2014年9月2日放映
(3)『日経スペシャル カンブリア宮殿』(テレビ東京系)2015年6月25日放映