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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

訪日外国人の「驚異的な伸び」は、東京五輪後も加速する アジアで激増の「豊かな人々」

文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役

 東京五輪の開催は20年、しかも五輪は開催期間わずか17日間ほどのイベントにすぎません。世界的な認知も進み、五輪に負けないほどの集客が見込まれているパラリンピックも開催期間は13日間にすぎず、2つを合わせても約1カ月間のイベントです。ましてや今、日本にやってきたところで五輪を観られるわけでもありません。急増の背景には別の要因がありそうです。

 訪日外国人客の増加を牽引しているのが、中国とASEAN諸国です。このエリアから日本への観光客が増加したことには、おおむね次の3つの理由が考えられます。

(1)中国・ASEANでの中間所得層の激増
(2)中国・ASEANからの旅行客へのビザ要件の緩和
(3)「円安」による為替効果

 中間所得層の定義はいくつか存在しますが、経済産業省「通商白書」(09年)での定義を使うと、年間可処分所得が5000ドル(約60万円)から3万5000ドル(約420万円)の層を指します。この層はさらに年間可処分所得が5000~1万5000ドルまでのローワーミドル層と、1万5000~3万5000ドルのアッパーミドル層に分類されます。

 この分類によれば、ローワーミドル層は貧困から脱し、市場経済に参入した層をいいます。つまり、新しい衣服を買い求め、テレビ、洗濯機、冷蔵庫といった家電製品を競って購入、携帯電話も手に入れる人たちのことです。以前、日本でも1950年代後半に三種の神器(白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫)として国民の多くが買い求めた時代と重なります。

 これに対してアッパーミドル層になると、家電製品のみならず、自動車を所有し、医療や教育等のサービス支出が増え、週末や夏季、冬季などに長期休暇を取得する層ということになります。

 現在、東アジアやASEAN諸国では中間所得層および富裕層(年間可処分所得3万5000ドル以上)が激増し、懐に余裕ができた彼らが、競って海外旅行を楽しむようになっているのです。

激増する中間所得層

 では具体的にどのくらいの中間所得層が、このエリアに存在するのでしょうか。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によれば、中国におけるアッパーミドルおよび富裕層の人口はおよそ3億人程度とされます。ASEANはインドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムの5カ国で約1億人強と見込まれます。この数値は09年ではそれぞれ1億人と4000万人程度でしたので、この5年間で3倍近くに膨れ上がったことがわかります。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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