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雨宮寛二「新・IT革命」

グーグル大改革、革新性喪失のリスクも アップルは倒産危機の過去

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検索サイト「グーグル」
 米グーグルは8月10日、年内を目途に持株会社Alphabet(アルファベット)を新設して、その傘下で自社組織を複数の企業に再編成する旨を発表した。ラリー・ペイジCEO(最高経営責任者)は、組織再編の目的を「新規事業の立ち上げに本腰を入れて、革新的なアイディアをこれまで以上に孵化させる」としているが、果たして思惑通りにことが運ぶのであろうか。

 新たな体制では、現在の中核事業であるインターネット検索・広告とその他の新規開発案件、研究・投資機能が独立した事業会社となり、アルファベットが統括する。具体的には、グーグル(ネット検索・広告事業)、グーグル・ファイバー(通信事業)、グーグルX(自動運転車などの開発)、キャリコ(長寿の研究)、グーグル・キャピタル(投資)、グーグル・ベンチャーズ(投資)などが独立会社としてアルファベットの傘下に入る。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 従来グーグルは1社体制において、ネット検索・広告を主力事業として、既存事業と新規事業とがさまざまな組織で運営・企画されていたため、どの事業にどれだけ投資し業績がどれだけ上がったかが明確でなかった。そのため、主力事業を除き各事業の採算性が不明瞭であったが、今回の組織再編によりそれぞれの棲み分けが明確となり、事業ごとに効率性や収益性の分析が促進されることになる。

 だが一方で、各事業の業績評価が明確になることは、コスト意識がさらに高まり独立会社ごとにコストマネジメントが浸透することになるため、革新性の芽を摘むことへとつながる可能性がある。徹底したコスト管理と業績評価のサイクルは、組織を硬直化させる危険性をはらむ。

独自ルール堅持の必要性


 それでは持株会社への移行により、グーグルは革新性を失うことになるのか。

 組織が巨大化することで革新性を失った企業は、これまでにも数多く存在した。例えば、アップルはApple 2(「2」の正式表記はローマ数字)の開発以来、組織が肥大化してPCという次元を逸脱できず、1996~97年に2年連続で赤字を計上し倒産寸前に追い込まれている。

 グーグルは、これまでフラットな組織を保ち、新規案件に投資する経営手法を採ってきた。例えば、意思決定者は最低でも7人の直属部下を持たなければならないという、フラットな組織を保つための「7のルール」や、リソースの70%をネット検索などの主力事業に、20%を成功間近の成長プロジェクトに、10%をリスクの高い新規プロジェクトに投資する「70対20対10のルール」がそれである。

 グーグルが革新性を失わないためには、こうしたルールを新体制に移行しても堅持することが必要不可欠であろう。グーグルにしてみれば、革新性と収益性というトレードオフの関係にある両者を主力事業並みに達成することが理想であるが、グーグルカー(自動運転車)や気球を使ったネット接続サービスといった新規の開発案件でもそれを達成できれば、新たなる境地が開けてくるに違いない。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)