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「スター」になりたがらないパナソニック津賀社長へ提言 「感動の名手」盛田昭夫に学べ

文=長田貴仁/岡山商科大学教授(経営学部長)、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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 東芝の一件を反面教師として、「スター社長不要論」が台頭し、業績だけをこつこつと上げ、その計画、経緯、結果を理路整然とプレゼンするだけの頭が良さそうな「ガリ勉型社長」ばかり増えても、ステークホルダーは心ときめかないだろう。今の日本企業の経営者に求められるのは、業績向上は当然のこととして、それを実現する上でいかに人々の琴線に触れる言葉を発信、有言実行できるかである。コーポレートガバナンスという仕組みだけが立派でも、人々がおもしろくないと思う経営者では、あまりにも殺伐とした企業社会になってしまう。

ラポートトーク

 ここで言語学の知見を紹介しておこう。人の話し方は、大きく二種類に分類できる。事実、数字を並べ理路整然と語る「レポートトーク」と、心を動かす「ラポートトーク」がある。実は、人間の記憶に定着するのはラポートトーク。数字に基づく企業価値ばかりが問われる昨今、経営者はラポートトークを再考すべきではないか。

 かつて、ラポートトークが上手な経営者は少なくなかった。その一人が、ソニーの創業者・盛田昭夫氏である。独特の個性ある話し方だったが、日本語だけでなく堂々とした説得力のある「日本人らしい英語」で世界の人びとを魅了した。

 夏になると思い出す。三十数年ほど前に軽井沢で目にした光景だ。筆者はある社長の別荘にいた。当時ソニー会長だった盛田氏が、「これ、うまいですよ。召し上がって下さい」と手土産を持って立ち寄り、ビジネス談義、日本論に花を咲かせた。その時、若き筆者は、間近で聞くラポートトークに心を動かされ、幸せな気分になったものだ。

 その頃の盛田氏は業界紙も含め、さまざまなメディアの人と分け隔てなく交流していた。実は「技術のソニー」といわれたが、もうひとつの顔は「広報のソニー」でもあった。盛田氏を主役とするトップ広報が、ソニーの急成長を支えたといっても過言ではない。

 パナソニックの津賀社長については、「なかなかよくやっている」とその経営手腕を高く評価するOBも少なくない。確かに、論理的で頭がいいだけでなく、新しい稼げる事業を創造し、それを着実に遂行していく行動力がある。ところが、未だに“Who is Tsuga?”なのだ。今や、ソニーとパナソニックは業態もお互いに変化し、ライバルと言えないかもしれないが、亡き盛田氏を手本に、もう少しオープンかつ味のある広報マインドを発揮してもらいたいものだ。「創業者とサラリーマン社長は違う」と言ってしまえばそれまでだが、存在感が希薄になりがちな専門経営者だからこそ、スターになる努力が求められる。

(文=長田貴仁/岡山商科大学教授<経営学部長>、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー)

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