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雨宮寛二「新・IT革命」

アマゾン、動画配信でもまた無料 違いすぎる競合他社との力の差 独自番組に巨額投資も

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サイト「アマゾン」より
 アマゾンは動画配信サービス市場でも、自社の信条とする「低価格戦略」を貫くつもりである。

 競合のNetflix(ネットフリックス、月額料金650円)をはじめ、hulu(同933円)やdTV(同500円)、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ、同933円)などが独立サービスとして提供するのを横目に、「実質料金ゼロ円」で年会費3900円(月額料金325円)の「Amazonプライム会員」向け特典のひとつとして、追加料金なしで「Amazonプライム・ビデオ(プライム・ビデオ)」を提供する意向である。

 こうした方針からは、アマゾンの動画見放題サービスに対する姿勢として、力むことのない太っ腹ささえも感じる。アマゾンにしてみれば、プライム・ビデオはAmazonプライム会員の価値を高める「手段」にすぎないというわけである。競合企業が「目的」として展開するのとはわけが違うとでもいわんばかりである。

コンテンツに13億ドル投資


『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 これまでアマゾンは、Amazonプライム会員のサービス拡充に注力してきた。お急ぎ便や日時指定便、特別取扱商品(お米や水など)の取扱手数料無料サービス、会員先行タイムセールなどである。これらの特典に今月(9月)からプライム・ビデオもサービスとして加わるため、プライム会員の付加価値はさらに高まることになる。

 だが、この付加価値はただものではない。アマゾンはすでに米国をはじめ、英国、ドイツ、オーストラリアとアマゾン通販サイトの海外市場でドル箱となっている4カ国でプライム・ビデオのサービスを先行開始しているが、2014年だけでもアマゾンはプライム・ビデオのコンテンツに世界で13億ドルを投資している。

 その結果、『トランスペアレント』や『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』『タンブルリーフ』などが制作された。中でも、『トランスペアレント』は今年のゴールデン・グローブ賞のコメディー/ミュージカル部門作品賞を受賞している。これらのコンテンツに、日本の人気映画やドラマ、バラエティー番組などのローカル・コンテンツが独占的に加われば、さらにサービスとしてのブランド価値は高まることになろう。

 アマゾンは、こうしたローカル・コンテンツの制作投資を今後も継続していく意向である。コンテンツの拡充は、Amazonプライム会員とのシナジー(相乗効果)をますます高める「手段」として大いに機能するに違いない。

 14年のAmazonプライム会員数は、対前年で53%増と急速に伸びている。果たして、プライム・ビデオは、その追い風となり得るのであろうか。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)