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あの「日陰」企業が大躍進 利益が積み上がる「驚異的サイクル」確立 30年の忍耐の果実

文=福井晋/フリーライター
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 「石の上にも30年」で取り組んできたエンジン部品事業が、V2500からGEnxまでを1巡目とするなら、同社のこの事業は今年から2巡目に入ったといえる。

 IHIは今年5月、エアバス社の「A320neo」向けエンジン「PW1100G-JM」の部品としてRSP方式で開発した「低圧圧縮機」の量産初号品を出荷した。10年12月に開発着手したA320neo(開発費15%出資)はすでに約4000機が受注確定しており、PW1100G-JMも約2000基の受注が確定している。このため、同社はこれからPW1100G-JMの本格量産期に入る。

 さらに14年から開発が始まったボーイング社B777の後継機「B777X」(19年から量産開始予定)向けエンジン「GE9X」のRSP方式開発・生産も決まっている(開発費12%出資予定)。こちらは開発プロジェクトがスタートしたばかりなので、当分の間は先行投資の重圧が続く。それもしばらくの我慢で、5~10年後には果実の収穫期に入れる。

 全体的に見れば、IHIのエンジン部品事業は1巡目に投資した資金を回収し、その資金を2巡目に入った開発に再投資するパターンに入っており、「開発投資→量産投資→増産とアフタービジネスによる投資回収」のサイクルを安定的に回すビジネスモデルをすでに確立したといえる。

 需要が限定的な自衛隊の戦闘機向け小型ジェットエンジン生産事業(受注額は毎年1000億円程度の横這い)と比べ、民間航空機向け大型ジェットエンジン部品事業は投資額が巨額で、投資回収期間も長い。したがって事業リスクも高い。半面、参入障壁が高いだけに莫大な見返り(売上高約3000億円/15年3月期)を独占できる。ある意味で重工業界のハイリスク・ハイリターン事業といえる。それだけにIHIは「利益率が高い付加価値のある部品開発に絞って出資する」(同社関係者)などリスク管理も怠りなく進めているようだ。

 これまでほとんど注目されることがなく、日陰のような存在だった事業がIHI成長の新しい原動力になろうとしている。
(文=福井晋/フリーライター)

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