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鳥貴族、奇跡の経営 なぜ激安でも本物の味?高コストでも質追求、コストダウン徹底…

文=福井晋/フリーライター
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非効率と効率の両立

 さらに外食産業専門の経営コンサルタントは「この2つの強みを業界抜群の競争力に転化しているのが、非効率と効率の両立追求だ」と、次のように説明する。

 非効率追求の典型が、国産鶏肉の使用と店舗での串打ちだ。総合居酒屋が食材問屋などを通じて調達している輸入鶏肉のほうが、今の円安でも国産鶏肉より圧倒的に安い。その代わり国産鶏肉より鮮度が劣るし、何よりも安全性に不安がある。だから同社は自社の独自基準で餌の中身、孵卵場、飼育場などを現場で審査し、選別した生産者の国産鶏肉しか調達しない。その鶏肉を前述のように各店舗で営業開始の5時間前から1本1本串に刺してゆく。

 コスト的には非効率極まりないが、「焼き鳥専門店で焼き鳥が本物でなかったら存在価値がない。本物を守るためには非効率であってもここは崩せない」(鳥貴族関係者)という。メーカー品の業務用タレより高コストの自家製タレにこだわっているのも同じ理屈だ。

 では、効率追求の面はどうか。

 たとえば鳥貴族の場合、焼き鳥をはじめとする食べ物メニューは約60点で、総合居酒屋の70%程度に抑えている。このうち、半期ごとに人気の低いメニュー約10点を新メニューに更新している。これでメニューのマンネリ感と死に筋メニュー発生を防いでいる。メニュー数を総合居酒屋並みにすると、それだけ食材の調達コストや調理コストが膨らむ。死に筋メニューも発生しやすい。

 また、ウェルカムサービスの「通し」を出さない。コストのかかる炭火を使わず、代わりに遠赤外線で鶏を旨く焼ける電熱グリルを採用している。さらに出店地が鬼門でも気にしない、家賃の高い一等地に出店しないなど、コストダウンできるところは極限までコストダウンし、効率性を高めている。

 前出コンサルタントは「同社の経営の特徴は、『何が足りないか』ではなく『何が余分か』を見極めているところにある」と指摘する。

 居酒屋業界はワタミの長期低迷が示しているように、単に「安い」や品書きを書き換えただけのような「メニュー刷新」では集客できなくなっている。「その店に行かなければ楽しめない本物の味や満足感」の付加価値を提供できなければ生き残れない時代になってきた。鳥貴族の息切れしない成長は、それを物語っているといえそうだ。
(文=福井晋/フリーライター)

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