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景気不安定のなかで強引に消費増税突入、国民に甚大な煩雑さ強要…財務省の危険な横暴

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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 還付制度が提案された背景には、消費税の逆進性を抑えたいという動機がある。確かに消費増税は低所得者の税負担を増やし、可処分所得を減少させる。それは景気にマイナスに働きやすい。一方、高所得者や富裕層の消費行動に対して、消費増税が与える影響は限定的だろう。特に、高額の支出は増税後も安定して推移する可能性がある。所得環境や保有資産の水準も考慮し始めると、逆進性をめぐる議論は容易には進まない。

 つまり、常に全世帯に逆進性の影響が出るとはいい切れないのである。逆進性の影響は慎重に考慮されるべきだが、これにとらわれすぎると効率的な景気下支えの策を議論する余地が狭められてしまう恐れがある。消費増税の影響を緩和するための負担軽減の手法は、シンプルかつ消費マインドに働きかけやすいことを重視して考えるべきだ。

最も効率的な国民負担の軽減方法

 国民の負担を軽減する有力な方法は、軽減税率の導入だろう。財務省は軽減税率の対象となる品目の線引きが難しいとして導入には消極的だ。しかし、消費者心理にとって重要なことは、お金を払う時点でどれだけの税負担の軽減を感じることができるかだろう。還付制度の場合、経済効果は同じでも消費者が軽減措置を感じづらい側面があることは慎重に考えるべきだ。

 14年4月の消費増税でも確認された通り、消費増税後の景気は不安定になりやすい。特に生活必需品の分野では、消費税の逆進性の影響は大きくなりやすい。そこで、品目別に軽減税率を導入する意義は大きいと考えられる。品目の分け方が容易ではないという指摘もあるだろうが、生活必需品として分類できるものをひとまずは軽減税率の対象にすることは、消費増税後の景気を安定させることにつながるはずだ。

 財政再建を進める上で税収の引き上げは不可避だ。だからといって、景気動向や効率的な景気下支えの方策がまとまらないまま消費増税を実行することにはリスクが伴う。デフレ環境下、消費が軟調に推移してきたことを考えると、政府はそうしたリスクを冒すべきではない。

 政府、関係省庁には、消費者の行動や心理、中小企業の経営動向などに留意して効率的な策を検討することを期待したい。消費増税後の景気の落ち込みを回避し、税収基盤の強化に対する国民の理解を取り付けるためにも、品目別の軽減税率の導入を真剣に検討すべきだ。
(文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授)

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