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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

首相の携帯値下げ要求、一世帯1万円以上の負担減か 税収上振れ分は国民へ配分すべき

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト

 しかし、一律的な値下げとなると、家計部門への直接的な恩恵はあるが、通信会社の売り上げは値下げ分減少することが想定されるので、その分の悪影響も考慮しなければならない。したがって、家計部門のメリットはあるが、移動通信事業者には業績悪化のリスクもあり、トータルでどの程度のメリットとなるかの計算は困難である。

 このため、携帯料金引き下げ策は、家計支援策として議論を進めるというよりも、移動通信事業者の競争環境の整備を通じて、いかに料金引き下げを図るかという観点で議論を進めるべきものと考えられる。

税増収分の一部還付

 筆者は、最も公平で現実的な家計負担軽減策は、名目GDP拡大に伴う税増収分を一部還付する定額給付であると考えている。理由としては、国民全員に同額を支給するため、特定品目に関連した負担軽減よりも公平感が高くなるためである。また、定額給付金で先例があることからすれば、世帯主の年齢階層に関係なく低所得者の資金繰りにも余裕をもたらす可能性が高い。導入コスト面からみても、定額給付は自治体の事務負担も煩雑にならず、国民的には本人確認と振込先銀行口座の登録で済む。

 足元の経済環境をまとめると、アベノミクスにより経済のパイが拡大する一方で、消費税率引き上げや円安の副作用により低所得者を中心に生活負担が高まっていることからすれば、上振れした税収の一部を使った家計への再分配政策は不可欠であると思われる。しかし、何かしらの再分配政策が必要となれば、逆進性緩和の効果や実務的コストが低い定額給付は有力な手段といえる。

 なお、内閣府が公表している経済財政の中長期試算において、14年度の税収が2.3兆円も上振れしているにもかかわらず15年度の税収見通しが当初予算から変更されていないことからすれば、その範囲内で財政負担を考えたほうがいい。ちなみに、現在継続中の低所得者向けの臨時給付金は1人あたり6000円を支給して所得が少ない家計の税負担を緩和している。

 つまり、すでに臨時給付金を受け取っている世帯については、6000円以上の給付がなければ実質負担が増加してしまうため、あくまで筆者の考えだが、国民1人あたり1万円を給付すれば、財源は1.3兆円程度にとどまる。したがって、今年度の補正予算編成を経て国民1人あたり1万円程度の範囲で定額給付をすることが検討に値しよう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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