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碓井広義「ひとことでは言えない」

隔離されたハンセン病患者が、故郷に戻れない実態 封殺された差別と偏見

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

 先日、日本民間放送連盟賞(民放連賞)が発表された。筆者は、この賞の中の特別表彰部門「放送と公共性」の審査員を務めている。個々の番組ではなく、公共性という意味で際立った放送活動を顕彰するものだ。今年授賞した事績(最優秀1、優秀4)を紹介しながら、放送の地域貢献について考えてみたい。

 審査に当たって、いつも確認することがある。それは番組という枠を超えた複合的取り組みか、または視聴者・聴取者サービスへの新たな挑戦か。それとも放送のあり方自体を探る試みを含んでいるか。

 今年もまた、それらに該当する優れた事績が選ばれた。共通しているのは、地域とそこに暮らす人たちへの温かな視線であり、放送活動への真摯な取り組みである。

最優秀

福井テレビジョン放送『アーカイブスを地域に活かす~「人道の港」番組制作と教育活用~』

 「人道の港・敦賀」をドキュメンタリーで伝える活動が始まったのは2006年である。「命のビザ」で知られる杉原千畝によって命を救われたユダヤ難民たちが、初めて日本の土を踏んだのが敦賀だった。「杉原サバイバー」と呼ばれる彼らをはじめ、当時の市民の証言などを軸に、複数の番組が作られてきた。

 それと並行して、番組という資産を教育の場で活かそうという取り組みが行われてきた。敦賀市の教育委員会と連携し、ドキュメンタリー素材を取り込んだ教育用DVDを共同開発。小・中学校で映像教材として利用されている。いわば“社会の公共財”として放送をどう活かすかの試みであり、福井以外の地域でも大いに参考になる。

優秀

福島中央テレビ『ゴジてれChu!3部 きぼう ~ふくしまのめばえ~の放送による福島での子育て応援キャンペーン』【編注:「3」の正式表記はローマ数字】

 東日本大震災から4年半が過ぎたが、津波や原発事故の影響は様々な形で続いている。特に福島における“子育ての環境”は、事故によって大きく変化した。以前とは違って、子供たちを公園で遊ばせることにさえ気をつかう毎日だ。また、地元で出産することへの不安も消えてはいない。

 そんな中、2012年に福島中央テレビは、県内で生まれた赤ちゃんとその家族を紹介するコーナー「きぼう」を、夕方のニュース情報番組でスタートさせた。すでに800人以上の赤ちゃんが登場している。しかも、SNSを通じて、全国各地で暮らす県民も慶事を知ることができる仕掛けだ。新たな命の誕生は、まさに地域の希望である。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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