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「雇用情勢は絶好調」はまやかし?地方では悪化や不況の兆候 トヨタのお膝元でも異変

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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 その伊賀地方全体を管轄するハローワーク伊賀の有効求人倍率は、今年1月は1.53で三重県内では津に次ぐ2番目の高さで、伊勢地方の四日市や鈴鹿や松阪よりも良かった。

【三重県・ハローワーク伊賀の有効求人倍率、新規求人倍率の推移(15年1~8月)】

※以下、左が有効求人倍率、右が新規求人倍率

1月    1.53      2.26
2月    1.48      1.82
3月    1.34      1.63
4月    1.11      1.36
5月    1.06      1.66
6月    1.08      1.83
7月    1.27      2.49
8月    1.30      1.83
(出典:三重労働局の統計資料より/パートを含む常用)

 それが5月には1.06に急落し、6月も1.08と伊賀地方の雇用情勢は一気に悪化した。5月に何が起きたかというと、14日にシャープが2223億円の最終赤字決算を発表して「シャープ・ショック」が起きている。事前に予想されていたとはいえ、内容の悪さに唖然とした関係者も少なくなかったはず。同じ三重県でも東の伊勢地方は名古屋に近く、鈴鹿市のホンダ、四日市市の石油化学産業、伊勢市の観光などほかの産業でカバーできる余地がある。しかし伊賀地方は名古屋、大阪までは距離があってシャープへの依存度が高かったため、その影響をもろに受けて有効求人倍率が大きく減ってしまった。

 ショックは伊勢地方にも及んだ。シャープは3月に中小型液晶パネルを生産する多気町の三重第1工場を閉鎖したが、それを管轄するハローワーク松阪も、亀山市の第一工場、第二工場を管轄するハローワーク鈴鹿も、5月、6月の有効求人倍率は1倍割れを喫してしまった。

 その後、7月、8月は伊賀地方をはじめ三重県の有効求人倍率は回復をみせたが、シャープ・ショックは三重県の雇用情勢に大きな爪痕を残している。このことは、特定の大企業に依存する地域経済は、その企業の業績が悪化すればいかにもろいかを物語っている。今後もそんなケースは、日本全国で起こる可能性がある。

 景気が減速したら、その影響が真っ先に現れるのが雇用である。08年のリーマンショックの時も、非正規雇用の募集停止や「雇い止め」が真っ先に起きて新規求人倍率、有効求人倍率が急減し、その後に希望退職募集など正規雇用の人減らし、残業カットなど実質賃金の引き下げ、新規大卒者の就職氷河期などが長く続いた。全国どこに住んでいても、労働局が発表する最寄りのハローワークの有効求人倍率、新規求人倍率を毎月チェックして、次の雇用危機への備えを怠りなく。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)

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