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中上健次、吉村昭からBLに自費出版作品までノミネート……発表! 肉体うずく!土方文学大賞

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――中上健次による芥川賞受賞作品『岬』など、文芸小説では土方・土木・建築をテーマにした作品が描かれてきた。ただし、いまだそれは体系的にまとめられてはいない。そこで「土方文学賞」と称して、土木建築系フリーペーパーを手がける石丸元章氏を審査委員長に、審査委員たちと土方文学を定義しつつ、関連作品を紹介する――。

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「土方文学賞」選考委員のみなさま。左から青柳氏、萩原氏、石丸氏、海猫沢氏、向井氏。直木賞、芥川賞の選考会が、東京・築地にある老舗の料亭「新喜楽」で行われることに対抗し、本賞の選考会は、新宿歌舞伎町の中華料理店「上海小吃」で執り行われた。

──土方をテーマにした小説をレビューしていく本企画。まずは、「土方文学賞」とはなんぞや? というところからお話しいただけますか?

石丸元章(以下、) これまで、土木建築における労働を扱った文学作品や、そこで描かれる生活や思想を特別にくくって見てみましょうという視点はありませんでした。そんな前例も基準もない「わからないもの」を選考してみようというのが今回の試みです。選考委員は、労働小説『ニコニコ時給800円』(集英社)の著者である小説家の海猫沢めろん先生(以下、)、設備会社「株式会社Hagibow」の代表取締役にして読書家の萩原富士夫さん(以下、)、「古書現世」店主にして私の信頼する本読み・向井透史さん(以下、)、オタクからエロまで現代のカルチャーに精通するライターの青柳美帆子さん(以下、青)、そして土木建築系カルチャーマガジン「BLUE’S MAGAZINE」の制作指揮・主筆の私・石丸元章が務めさせていただきます。一応、注を付けておきますと、実際に土木作業の現場で働く方々は、職人であり、土方というのはそれを含めた呼称として扱います。

 この手のテーマとなると、決まって中上健次が出てきますけど、それは違うと思うんです。中上が空港の荷役作業員として働いていたのって、柄谷行人から教えてもらったエリック・ホッファー(アメリカの作家。学校に通わず、肉体労働をしながら独学で哲学などを深めた)を読んだせいらしいんですが、もうそこでアウト! 田舎の現場には、思想なんてない。あるのは気合いと根性と侠気。だからイデオロギーに何の疑問も抱かない、そういう作家の作品が読みたい。

 実際に体験もしていて思うのは、土建の現場って、いい小説の題材になると思うんです。現場には、さまざまなバックボーンを持った人たちが集まってくるし、老若男女がいて、さまざまな人物配置ができるから、物語展開もしやすい。群像劇に適しているんですよ。

 事故をはじめ、トラブルがつきものですし、事件も起こしやすいですしね。

 お金も絡んでくるから、ミステリーにもつながるかも。

 でも、文学の人が労働について書くと、なぜかプロレタリアートとか左翼的な思想と結びつくんですよね。

 最近の作品だと、奥田英朗の『オリンピックの身代金』【1】なんかもそうですね。マルクス経済学を学ぶ主人公が、死んだ異父兄と同じ飯場で働くことで、東京と地方の格差に気づく。で、「地方が搾取されている!」と憤り、オリンピックにテロを仕掛けるという、まさにイデオロギー的な話でした。

 もちろんイデオロギー的な側面があっても面白いんですけど、それが前面に押し出されちゃうとつまらないですよね。小説ではありませんが、最近、本坊元児という芸人が書いた『プロレタリア芸人』(扶桑社)という本がありましたが、お笑いの角度から労働をとらえていてすごく面白かった。そういう新しい発見がある作品を読みたいね。

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