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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

うますぎるハーゲンダッツ!材料はシンプルなのに、なぜ他社はマネできない?

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

喜びと感動がテーマの商品開発

 商品のコンセプトからはじまり、素材選び、配合の方法など、今まで体験したことのない感動を提供できる味わいに仕上げるため、ひとつの商品を発売するまでにつくられるサンプル数は膨大な量になっています。フルーツを使用する商品なら、世界中からそのフルーツのサンプルを取り寄せ、目ぼしい品が見つかれば海外であっても農場まで出向いています。また、使用する品種が決まってからも、果汁の割合、果肉の大きさなどを変えたサンプルを納得いくまで試作する取り組みも行われています。ちなみに、「グリーンティー」「クリスピーサンド」などの開発に要した時間は5年以上にも及んでいます。

 ハーゲンダッツでは新製品を出した後に、あまり売れないから販売中止にする、味を調整し直すといったことはしません。同社には「ゴールドスタンダード」という言葉があり、常に最高の味を目指しており、10人の消費者のうち6~7人が満足する程度では発売はせず、その基準は他社よりかなり高く設定されています。

コンディション

・低く抑えた空気含有率

 アイスクリームのきめ細かく、クリーミーでなめらかな舌触りはアイスクリームの中に含まれている空気の量と大きな関係があります。アイスクリームは空気の量が多くなればなるほど密度は低くなり、なめらかな舌触りが失われてしまいます。ハーゲンダッツでは、この空気含有率を約20%と低く抑え、アイスクリームの密度を高めることで、中身の濃い、なめらかな舌触りのアイスクリームに仕上げています。

・おいしさのための低温管理

 アイスクリームの中には、アイスクリスタルという目に見えない氷の結晶が含まれています。温度が上昇すると結晶は大きくなってしまい、なめらかな食感が失われ、ざらざらとした食感になります。ハーゲンダッツのアイスクリームは乳化剤や安定剤を使用していないため、温度変化の影響を受けやすいのです。そのため、倉庫管理時は摂氏マイナス25度以下、輸送時はマイナス20度以下と定め、低温管理を徹底しています。また専用の顕微鏡でサンプルのアイスクリスタルの大きさをチェックするとともに、パッケージや梱包形態を工夫することにも取り組んでいます。

 上記のように、いかにハーゲンダッツが徹底した管理を行ったとしても、消費者への販売窓口となる小売店がいい加減な管理では元も子もありません。よって、ハーゲンダッツは定期的に店舗を回り、保存状態をチェックし、必要に応じて改善要求を行っています。このように一連のプロセスにおいて、徹底した取り組みが実現しているわけです。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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