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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

特徴なく売り上げ低迷の豆腐店、なぜ高級路線で成功?「常識外れ」の製法を確立、取材殺到

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消極的になりがちな中小企業の戦略

「豆太 HP」より

 大企業と比較すると、人材、資金、設備など、さまざまな経営資源において中小企業は不十分な場合が多いでしょう。こうしたことを言い訳に、中小企業では何事においても消極的な戦略を取る場合も少なくはないはずです。

 しかしながら、大企業に比べて中小企業がすべての面で100%不利な立場にあるとはいえず、大企業よりも勝るポイントが必ず何かしらあるはずです。

 現在、札幌の高級豆腐市場で大きな影響力を持つ豆太は、老舗のような長い歴史や豊富な資金や特別な設備など、なんら保持していなかったにもかかわらず、2000年に高級豆腐市場に参入し、現在に至るまで順調な販売を維持しています。

 今回は、豆太の高級豆腐への取り組みを通じて、中小企業における商品開発やマーケティングについて検討していきましょう。

高級豆腐誕生の背景

『「高く売る」戦略』(大崎孝徳/同文舘出版)
 豆太の前身となる岡内食品の豆腐は、卸売価格35円、店頭の小売価格48円が基本で、セール時には3丁100円で販売されていました。当時の取引先は安売りの個人商店が中心であり、大手小売業者が台頭してくる状況のなか、豆腐の売り上げは下降傾向になっていました。

 販売ボリュームを維持するために、大手スーパーなどとの取引を拡大させようと交渉を試みたものの、原価割れが生じるほどの価格要求があり、最後には「お宅の豆腐でなくても、どこでもいいんだよ」といわれる始末でした。実際、岡内食品の豆腐はなんの特徴もない普通の豆腐で、そう言われても仕方のない状況でした。

 こうした状況において、強力な流通パワーを回避し、適正価格で取り扱ってもらえる、また今後の成長が見込める業態ということで自然食品の店をターゲットにしました。もともと他社との差別化のため、こだわりのおいしい豆腐を北海道産大豆と天然にがりと天然水でつくろうと考えていたこともあり、自然食品の店とはそういう意味でも相性がよかったわけです。

 1年間ほど、自然食品店を中心に北海道産大豆と天然にがりによる豆腐の市場性についてリサーチし、「どういう商品なら消費者に喜ばれ、適正な価格で販売できるか」ということを考え続けました。こうしたリサーチを行っていた際、ある自然食品の店主から「消泡剤を使わず、豆腐をつくってほしい」との要望がありました。