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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

特徴なく売り上げ低迷の豆腐店、なぜ高級路線で成功?「常識外れ」の製法を確立、取材殺到

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 例えば、パッケージに関して、普通、豆腐のパッケージは横書きになっていますが、豆太とうふの場合は縦書きです。縦書きにすると、商品を縦に並べなければならず、手間やスペースの問題で小売業者からは敬遠されますが、消費者にとっては一目でわかる差別化が実現するわけです。また、通常、パッケージには“木綿豆腐”や“絹豆腐”が大きく表示されていますが、「豆太とうふ」の場合、ブランド名である「豆太」が手書きの字体で大きく記載されています。

 また、容器には白色ではなく透明の材質を採用しています。白い容器の場合、豆腐の角が欠けるなど不具合があっても消費者はわかりません。透明の容器には、豆太の品質や安全への絶対的な自信と覚悟が表れています。さらに、消費者に「豆腐の色をよく見てほしい」という思いも込められており、こうした点について「たかがパッケージ、されどパッケージ」と社長は語っています。

 広告に関しては、販売開始3年目に取引銀行主催の商談会に商品を出品した際、地元の北海道新聞に取り上げられ、以後、ほかの新聞社やテレビ局やラジオ局などから100を上回る取材依頼があり、一切お金をかけることなく大きな広告効果を得ています。ここまで大きく取り上げられた要因として、北海道産大豆の使用や新しい製法、安全な商品、パッケージのインパクトなどが挙げられます。つまり、本当に差別化された商品ならばお金をかけなくとも、自然に情報が広まっていくということです。

豆太とうふの効果

 まず、費用対効果に関して、北海道産大豆の使用など、かなりのコスト増となっているものの、差別化された商品に対して、流通業者からの値下げ要求はなく、適正な利益が確保できています。

 模倣への対抗策に関しては、もちろん商標登録などは行っていますが、それ以上に徹底的にこだわり、手間をかけてつくることが他社にとっては極めて模倣困難なポイントになっています。例えば、消泡剤を使わないため、豆乳の煮こみに手間をかけ、その後、泡取りの作業などを行う必要があります。できあがった製品は非常に柔らかく、壊れやすいため、丁寧に容器に詰めなければなりません。さらに、高濃度の豆乳を用いているため、絞り機の詰まりが激しく、メンテナンスにも時間をとられます。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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