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雨宮寛二「新・IT革命」

ユーチューブを長年悩ます「収益モデル確立」問題 ついに広告表示なしサービス開始

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「YouTube」より
 米グーグル傘下のユーチューブが10月21日、新たな有料サービスとして、「YouTube Red」を発表した。月額9.99ドルで広告を表示せずに動画共有サイト「YouTube」のコンテンツが視聴できるというこのサービスは、同社の新たな収益基盤として機能するのであろうか。

 ユーチューブの収益モデルの確立は、グーグルが2006年10月にユーチューブを買収して以来、克服すべき大きな経営課題であった。そのために、グーグルはこれまで新たなモデルを何度も試みてきた。その中心はテキストやバナーによる広告モデルであったが、莫大なコストを埋めて利益を捻出するまでには至らなかった。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 そもそもYouTubeは、世界中から投稿される動画を無料で開示するプラットフォームで、14年には毎分300時間に値する動画がアップロードされている。アップロード時間数は07年時点では1分当たり6時間であったが、その後増加し続け、10年11月には35時間、12年1月には60時間、13年5月には100時間と着実に増加してきた。

 このように年々増加する動画を格納するには莫大な数のサーバーが必要となり、設備を維持するコストがユーチューブの経営を長年圧迫し続けてきた。

 そこで、14年11月には、ディスプレイやオーバーレイといった広告による収益モデルから脱却して新たな試みに出る。それが、YouTube初の有料音楽サービスである「YouTube Music Key」である。月額9.99ドルのサブスクリプション型のサービスで、楽曲やミュージックビデオを広告なしで再生・視聴できる。当初招待制で開始したこのサービスは、その後、正式版として「YouTube Music」に改められた。

 今回発表されたYouTube Redは、このYouTube Musicに続く第2弾の有料サービスとなる。ユーチューブとしては、楽曲、動画などアップロードされるデジタルコンテンツならなんでも使ってやろうというわけである。同社はこのサービスのメリットの一つとして、「バナーなどの広告が一切表示されない」点を掲げ、謳い文句としている。

 このほかにも、「ダウンロードしてオフラインで視聴できる」「バックグラウンドで再生できる」「YouTube Musicの機能が無料で使える」「Google Play Musicが無料で利用できる」などメリットが数多く存在するが、従来サービスとの顕著な差別化は特段見られない。

 ユーチューブは16年に、新たに「特別番組を視聴できる」機能をYouTube Redに追加する意向である。当然ながら、特別番組が多くの視聴者に受け入れられるかどうかは、良質なコンテンツをつくり出せるか否かにかかっている。それには、YouTuberなどのサードパーティに頼る従来のやり方に加え、自己投資による本格的なコンテンツ開発にも注力する必要があろう。

 YouTube Redの真価が問われるのは、この新たな機能の本格的な始動を待つことになる。果たしてYouTube Redに光明を見いだすことはできるのであろうか。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)