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江川紹子の「事件ウオッチ」第40回

「再婚禁止と夫婦別姓規定」最高裁判決に注目集まる 家イデオロギーに固執してきた永田町の「非常識」

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 とはいえ、あらゆる職場に共通するルールができた意義は大きく、それまで門戸が閉ざされていた総合職などに女性が採用されるようにもなった。その後の法改正で、募集・採用、配置、昇進などに関する「努力義務」は「差別禁止」の規定へと強化。今なおマタニティー・ハラスメントなど、さまざまな問題があるとはいえ、女性の仕事をめぐる環境は、30年前の女子差別撤廃条約の批准を境に大きく改善した。

 そのほか、生まれてくる子どもが日本国籍を持つためには、父親が日本国籍であることが必須条件だった国籍法も同条約批准前に改正され、父母のどちらかが日本国籍であれば子も日本国籍を取得できるようになった。

 しかし、いくつもの課題が積み残された。後に、それが国連女子差別撤廃委員会から指摘される。特に家族法をめぐっては、次の4点について何度も是正が求められてきた。

・婚姻適齢を、男性は18歳以上、女性は16歳以上としている民法規定を改め、同一年齢(勧告では18歳)とすること
・法律上の婚姻関係にないカップルの間に生まれた子(非嫡出子)は、相続分が嫡出子の半分とする相続差別を解消すること
・夫および妻に姓を選択する個人的権利を認めること
・女性のみに課せられている、6カ月間の再婚禁止期間を撤廃する立法措置をとること

 婚姻適齢に男女の差をつけるのも、非摘出子の相続差別も、明治憲法から引き継がれたものだ。

 このうち婚姻適齢と夫婦の姓に関しては、法制審議会が96年2月に民法改正を答申している。その改正案要綱は、婚姻適齢は男女いずれも18歳以上とし、姓については「夫もしくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称する」とした選択的夫婦別姓制度を導入するよう提言している。つまり、夫婦はこれまでのように同じ姓を称しても、結婚前の姓を続けてもよく、個人の選択に任せるというものだった。

最高裁判決を「非常識」と切り捨てる永田町の“価値観”

 法務省は、この答申に従って民法改正案を準備したが、与党自民党の中で反対が根強く、国会に提出することができなかった。

 民主党政権だった2010年にも、選択的夫婦別姓の導入、女性の婚姻適齢の18歳への引き上げ、相続差別の解消、女性の再婚禁止期間の短縮などを盛り込んだ民法改正案が用意された。しかし、連立を組んでいた国民新党の亀井静香代表(当時)が強硬に反対するなどしたため閣議決定ができず、結局お蔵入りとなった。

 非嫡出子の相続差別に関しては、13年9月に最高裁が違憲判決を出した。この司法判断によって、ようやく法改正が実現した。ただ、この時も自民党内から「伝統的家族制度を崩壊させる」などの異論が飛び出し、すんなりとは了承されなかったいきさつがある。

 例えば、当時同副幹事長だった西田昌司参院議員は、次のように語っている。

「最高裁判所の非常識な判断に従って法改正をしてしまうと、婚外子がどんどんできて家族制度が崩壊してしまう」

「最高裁の判決は、国民の一般感情とずれている。最高裁はわれわれの世間の常識と離れた所にある」

「現行憲法と結びつけると今回の決定になるとすれば、現行憲法が間違っている」

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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