NEW
田中洋「マーケティングのキーインサイト」

リプトン、卓越したブランド戦略 楽天、ソフトバンク…「神話化」される創業者たち

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「ヒト」のブランド化


リプトン HP」より
 ブランドに関する講演会で、「ブランド戦略の一番新しいトレンドはなんですか?」というのはもっとも多い質問のひとつです。筆者の答えは「商品や企業以外のモノをブランド化するのがトレンドです」ということになります。商品以外のモノとは、具体的にどのようなモノなのでしょうか。そのひとつが自社の「ヒト」をブランド化することです。

 たとえば、紅茶ブランドで知られるリプトン(ユニリーバ)は、今年からその創始者であるサー・トーマス・リプトン(リプトン卿)を自社などの複数のウェブページで訴求しています。東京・銀座でリプトン卿のミュージアムを立ち上げ、彼のライフストーリーが体感できるような展示も実施しています。

 ウェブサイトによれば、リプトン卿は5つのビジネス・イノベーションを起こしたといいます。それは、(1)奇抜な宣伝、(2)ティーバッグの普及、(3)生産革命、(4)慈善活動、(5)販売の工夫の5つです。

 19世紀の半ばに産まれたリプトン卿は1889年、39歳の時に相場の半額程度で紅茶を販売することで大成功を収めました。それまで量り売りで売られていた紅茶の茶葉を事前に計量し、あらかじめブレンドして、さらにティーバッグのかたちで紅茶を包装して売ることを考えたのです。

 1890年にはセイロン島に渡り、茶園を買収し、首都コロンボにブレンドとパッキングの工場を設立しました。さらに迅速な多店舗展開を行い、1号店の開店からわずか10年間で店舗数を20軒以上に増やしました。こうして紅茶の大量生産と販売までをバリューチェーン化し、効率化したのがリプトン卿でした。

 19世紀の終りごろ、今日の生活用品に関する多くのブランドが生まれていますが、この時期は「包装革命」(Pomeranz&Topik,2006)と呼ばれています。つまりパッケージ化された商品ブランドが、さまざまな要因によってこの時期に集中して誕生したのです。この意味でリプトン卿はまさに、包装革命を体現する人物であり、今日のリプトン・ブランド創造に貢献した人物でした。

創業者ブランド化のメリット


 いわば、リプトン卿は19世紀における優れたマーケターであり、かつ起業家でもあったのです。このように創始者を「ブランド化」することは、マーケティングの面からはどのような意義やメリットがあるのでしょうか。