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舘内端「クルマの危機と未来」

クルマのカタログ燃費と実燃費の大きな乖離は、いい加減に解消されるべきである

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表
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 中型のセダンが時速100キロメートルで走るときに必要な出力は、およそ15馬力ほどにすぎない。それにもかかわらずこのクラスのエンジンの最大出力は150馬力ほどだ。この10倍もの差はどこからくるかというと、加速である。

 たとえば高速道路に加速しながら余裕を持って流入するには、とても15馬力では足りない。時速50キロメートルから100キロメートルに加速するには、クルマの重さや空気抵抗の違いもあるので一概にはいえないが、少なくとも100馬力は必要だ。

 たくさんの馬力を出すには、たくさんの燃料を燃やす必要がある。したがって、15馬力よりも100馬力のほうが、たくさんの燃料を燃やすことになり、一定のスピードで走るよりも、加速するときのほうが燃費は悪い。

 優秀なレーシングドライバーはエコドライブもうまい。それは加速するときに無駄にアクセルペダルを踏まないことが大きな原因だ。ごく普通のドライバーは、ググッとアクセルペダルを踏んで加速し、前のクルマに追いついてスピードが出すぎると、パッとアクセルペダルを緩め、遅くなるとまたアクセルペダルを踏むといったような、いってみれば乱暴なアクセルペダルの操作をする。これでは何度も加速をしていることになるので、燃費が悪くなる。

 一方、レーシングドライバーは、アクセルペダルの操作を少しでも誤るとタイヤがいきなり滑りだしスピンするので、慎重にペダルを操作する訓練ができている。それで1回のアクセルペダルの操作で必要なスピードまで加速でき、結果として燃費が良くなる。

 では、モード燃費の測定ではどうだろうか。担当のベテランドライバーは測定器の上で、測定モードにぴたりと沿って加速する。決して無駄な加速はしない。アクセルペダルの操作に無駄はない。こんな運転は、とても一般の自動車ユーザーにはできない。

 このような運転技量の差に加えて、実際の道路での加速は、測定モードの加速よりもずっと激しいという違いがあり、カタログ燃費と実燃費の違いが生まれる。平均的なドライバーが技量に合ったアクセルペダルの操作で、実際の道路の加速の仕方で加速するような走行モードに変えなければ、カタログ燃費と実燃費の溝はいつまでも埋まらないだろう。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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