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ソニー創業家を滅ぼした長男、不正融資関与で崖っぷち…裁判沙汰と事業失敗の連続

文=編集部
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ソニー創業家を滅ぼした長男、不正融資関与で崖っぷち…裁判沙汰と事業失敗の連続の画像1ソニー本社(「Wikipedia」より/Koh-etsu)

 ソニー創業者の1人、故・盛田昭夫氏の長男、盛田英夫氏がとうとう崖っぷちに立たされた――。

 英夫氏が会長を務める東証2部上場の食材卸会社、ジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA、大阪市)で不適切な融資にかかわっていた。JFLAは2015年9月期決算の発表を延期した。その理由は、盛田氏が代表取締役を務める別の企業に不適切とみられる貸し付けをしたことを、監査法人が問題視したため。外部調査が必要だと判断した。

 JFLAは調査委員会の報告書を公表した。それによれば、JFLAは飲食店運営会社モリタフードサービスに9月末時点で2億4697万円を貸し付けている。同社は10年9月までJFLAの子会社だったが、その後は英夫氏が全額出資する米国ハワイの不動産会社モリタ&サンズの傘下に移っていた。モリタフードは事業の売却で3億3000万円の資金を得たもののJFLAへの返済に充てず、盛田氏が直前まで代表取締役を務めていた盛田アセットマネジメントに2億6000万円を貸し付けた。

 調査報告書は、盛田アセットは財務状況が著しく悪化しており、モリタフードからの借入金を返済できる可能性が乏しく、一方でモリタフードも盛田アセットへの貸付金が回収できない限りJFLAへ返済する原資となる資産はない、としている。

 これらを受け、盛田氏の行為は「債権を回収不能にしてJFLAの利益を犠牲にした」と認定し、取締役の善管注意義務に違反していると指摘した。

 盛田氏はJFLAから貸与されたJRエクスプレスカードで、昨年4月~今年3月の1年間に751万8000円分を利用していた。利用履歴から、このうち新幹線回数券を計235万8000円(168枚分)買ったと推測されるが、回数券購入と業務の関連性は明確な説明がなされていない。

 報告書は「個人的な費用を会社に支払わせることによって、会社の利益を犠牲にして盛田英夫氏個人が利益を得ている」と指摘した。そして、「JFLAの取締役会においては内部統制機能、とりわけ経営陣による不正リスクに対する内部統制機能が適切に働いていないと考えらえる」と結論付けている。

 盛田氏は追加調査の結果を踏まえて、会長職を辞任する意向だという。

事業失敗の連続

 英夫氏は14年、カード代金やマンション家賃の滞納で相次いで裁判を起こされ、世間を賑わした。高級マンション、ザ・キャピトルレジデンス東急を自宅として借りた。月額130万円の超高級物件で、滞納額は616万円に膨らんで家主の東急ホテルズがマンションの明け渡し訴訟を起こした。クレジットカードを使って、高級ブランド品の購入や高級料亭での飲食を続けたが、三井住友カードに対する代金支払いはストップ。滞納額は1159万円に上った。

 両社から裁判を起こされたが、英夫氏は出廷を拒否。裁判所は原告の請求を認めたものと見なし、マンションの明け渡しや滞納額の支払いを命じる判決を下した。

 英夫氏は1952年2月生まれ。芦屋大学卒業後、ソニーの子会社CBSソニーなどに勤めた。78年、親の反対を押し切って女優の岡崎友紀氏と結婚したが、長続きせず81年に離婚した。この時、昭夫氏は長男にソニーを継がせるのは無理と考えたようだ。

 造り酒屋の15代当主になるはずだった昭夫氏は、家業を継がなかった負い目を引きずった。晩年は英夫氏を盛田家の16代当主として、造り酒屋を継がせることに心血を注いだ。
85年にソニーを退社した英夫氏は、一族の資産管理会社レイケイ社長に就任。同社はソニーの株式を保有する筆頭株主だった。世はバブルの真っ最中。全国的にリゾートブームに沸き返り、空前のスキーブームがやってきた。

 そこで英夫氏は、レイケイが保有する大量のソニー株を元手に事業に乗り出した。最初に手掛けたのは新潟県妙高市でのスキーリゾート施設「新井リゾート」。500億円を投じて欧州の高級リゾート施設を模した、洒落た造りのホテルと広大なスキー場を建設した。93年に開業した頃にはすでにバブルは崩壊、スキーブームは去っていた。開業時から経営危機に陥った。

 昭夫氏は英夫氏には甘かった。新井リゾートが失敗すると、レイケイが保有するソニー株式を売却して尻拭いした。

止めを刺された御曹司

 93年11月、昭夫氏は脳梗塞で倒れた。昭夫氏が再起不能になると、英夫氏は新井リゾートの失敗を取り戻すために、レイケイが保有するソニー株を担保に再び資金を調達、さまざまな事業に投資しては失敗を繰り返した。

 ITバブル到来でソニー株が急騰していた99年、米コロラド州の大規模スキー場を100億円で買収した。ソニー株が担保だから、外国銀行は買収資金を気前よく貸してくれた。英夫氏の事業家としての致命傷となったのが、自動車レースの最高峰F1レースへの参戦だ。2000年末、ルクセンブルクで関連会社を設立し、仏プジョーのF1エンジン部門を買収。念願のF1レースに参戦を果たした。

 だが、ITバブル崩壊でソニー株は急落。外国銀行は融資を引き揚げ始めた。そのため金食い虫のF1ビジネスを続けることができなくなり、関連会社は01年11月に現地で倒産。最終的に230億円の巨額な損失を出した。

 これらの失敗と贈与税の追徴課税(65億円)を払えなくなったレイケイは、05年6月に解散。英夫氏の事業が失敗するたびにレイケイはソニー株式を次々と売却。持ち株はすべて失った。レイケイが保有していたソニー株は、一時2000億円以上の資産価値があった。レイケイは95年にはソニーの筆頭株主だったが、10年後の05年には大株主名簿から名前が消えた。御曹司の道楽でソニー株式をすべて失い、盛田家はソニーのオーナーではなくなった。

 英夫氏に残されたのは、一族が江戸時代から営む造り酒屋の社主の座。酒造会社の盛田株式会社から分割した資産管理会社、盛田アセットマジメントを拠点に再起を図る。03年、盛田アセットが東証2部上場のマルキン忠勇(現ジャパン・フード&リカー・アライアンス=JFLA)を買収し、英夫氏は会長に就き、再興を目指してきた。JFLAは、延期していた9月決算を12月7日に発表することを決めた。定時株主総会は12月29日を予定している。

 英夫氏は最後の砦だったJFLAからも追われることになる。昭夫氏の御曹司ということが唯一の信用だったが、もはや英夫氏を相手にする経済人はいない。
(文=編集部)

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