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雨宮寛二「新・IT革命」

お急ぎ便も音楽も動画も無料…アマゾン、プライム会員はどこまで進化?競合他社を無力化

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サイト「アマゾン」より
 米アマゾンは、自社のコアコンピタンスである通販サイトのリテンション(既存顧客維持)強化を加速化させている―――。

 現在アマゾンは、通販サイトを米国とカナダの北米市場に加え、13カ国に上る海外市場で展開している。売上全体の6割近くを占める北米市場は依然として有力な市場であるが、海外市場も拡大戦略が採られ、英国、ドイツ、日本がその主力市場となっている。

 こうした主要な市場ではすでに多くの消費者がアマゾンの顧客となっているため、売り上げが頭打ちとなり、新規顧客の獲得が難しい状況となっている。そのため、アマゾンはこれらの市場で、近年リテンションを強化する戦略を打ち出すことで、新たな光明を見いだそうとしている。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 11月18日にアマゾンジャパンが、米英独豪に続いて定額による音楽聴き放題のサービスである「プライムミュージック」をアマゾンプライム会員向けサービスの一環として展開したことでもわかるように、アマゾンは近年プライム会員のサービス拡充に余念がない。

 従来のお急ぎ便やお届け日時指定便、特別取扱商品(お米や水など)の取扱手数料無料サービス、会員先行タイムセールに加え、今年の9月にはやはり定額による動画見放題のサービスである「プライム・ビデオ」を開始するなどして、これまでプライム会員が利用できるサービスカテゴリを着実に増やしてきた。

 こうした付加価値サービスを実質無料でプライム会員に提供し、会員数を増やすことで、アマゾンは独占企業としての通販サイトのポジションを盤石なものとしつつある。実際、プライム会員数は日本では200万人を超え、世界では6400万人に達しているともいわれている。

 プライム会員のサービス・バリエーションを増やすことで、プライム会員のサービスとしての戦略強化はさらに促進される。それは、ネットフリックスやスポティファイといった現在単発でサブスクリプション型(加入型)サービスを展開する競合企業の戦略を無力化することにもつながる。

 サービス・バリエーションの拡充は、プライム会員数を増やす一方で解約率の歯止めにもなることから、自社の通販サイトに既存顧客を囲い込むための有力な手法となる。今や7割に達しているアマゾン通販サイトのリピーターは、今後さらに増えることになろう。

 このように見てくると、リテンション強化の戦略は決して守りの戦略ではないことがわかる。むしろアマゾンのケースでは、攻めの戦略であると位置づけられよう。アマゾンは常に攻めの姿勢を崩さない。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)