NEW
中西貴之「化学に恋するアピシウス」

唐辛子を食べすぎると死ぬ?いや、長生きする?

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

唐辛子鍋
 寒い季節になると、身体の中から温まるものが食べたくなりますね。そんな時に忘れてはならないのが七味です。立ち食いそば屋に入り、夏場は「汗がふき出すから」とセーブしていた七味を、この季節は「身体が温まるから」と温かいそばに大量投入しているのは、私だけではないはずです。

 ご存じの通り、七味とは七味唐辛子のことで、「七色唐辛子」ともいいます。「春の七草」は語呂合わせで覚えていても、七味の成分を7つ言える人はあまりいないと思いますので、まずはそれについて紹介します。

 主役は、ナス科の一年草植物「唐辛子」です。脇を固めるのは、ラーメンのお供にぴったりで、絞れば油にもなる「ゴマ」。さらに、うなぎに欠かせず、若葉は木の芽として食べられる「サンショウ」、あんパンのトッピングでもおなじみの「ケシ」、アブラナの種である「なたね」、中央アジア原産の「麻の実」、成熟したマンダリンオレンジの皮の「陳皮」……。

 以上の7種類を砕いて混ぜ合わせたのが、いわゆる七味です。しかし、みなさん、唐辛子以外の成分にはあまり興味がないようで、お店のカウンターに一味唐辛子しかないことも多く、そばなどに一味をかけて済ませている人も多いのではないでしょうか?

唐辛子を食べると熱くなるワケ


 さて、みんなに好かれている七味の主役「唐辛子」ですが、辛み成分はカプサイシンという化学物質です。

カプサイシンの構造式

 ベンゼン環と呼ばれる六角形の構造から2本の角のようなものが生え、その後ろには細長く胴体が続き、末端に2つに割れたしっぽがついたようなカプサイシンの構造は、まるで「龍踊(じゃおどり)」で担ぎ上げられる龍のようです。見るからに、おどろおどろしい姿をしています。

 化学物質業界には「Sフレーズ(セーフティフレーズ)」「Rフレーズ(リスクフレーズ)」という業界用語があります。これは、危険性のある化学物質に対して、安全な取り扱いやリスクの内容を表すものです。カプサイシンのRフレーズを調べてみると、「触ったり飲み込んだりすると有毒」「適切な防護服と手袋、保護眼鏡/保護面を着用して扱え」などと書かれており、なんだか驚きます。

 しかし、極端に心配する必要はありません。動物実験の結果から推測すると、その危険性は「カプサイシン20グラムを血管内に注射すると、5割の確率で死亡する」というレベルです。