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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

そもそも内村航平も吉田沙保里も、「自分の意思」で競技を始めたわけではない

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

何を強みとして、「第2の人生」を歩むか

 今回のトークショーは、為末氏が代表を務める株式会社侍の新サービス宣伝の一環として行われた。それは「アスリートの話」と題して、多くの困難を乗り越えて世界で活躍してきたトップアスリートのストーリーを紹介するサービスだ。筆者は、消費者目線でトップアスリートから何を学べるかを考えた。そして今回、2人の「強み」を分析してみたい。

 日本の実業団スポーツが全盛だった90年代後半まで、実業団に所属したトップアスリートが引退すると、その実業団チームもしくは学校(多くは母校)の指導者になるケースが多かった。「名選手必ずしも名監督ならず」という言葉はあるが、特に日本の場合は、指導者にはコーチング能力よりもトップアスリート経験が重視されてきた。

 これに対して、2人とも実業団に所属した後、プロ選手に転身して現役生活を続け、引退後はさまざまな分野での活動を行っている。

 現在の為末氏は、スポーツコメンテーターやタレント活動をする一方で、侍の代表や一般社団法人アスリートソサエティの代表理事を務める。同社団法人は陸上競技のみならず、さまざまな種目のアスリートの派遣や勉強会、キャリア相談なども行う団体だ。

 一方の朝日氏は、特定非営利活動法人日本ビーチ文化振興協会の理事長も務めながら、『Volleyball Channel』(BSフジ)のメインナビゲーターや、上記アスリートソサエティの代表理事を兼任する。2人とも古巣の競技の普及活動を行いながら、メディア発信など多彩な活動を続けているのだ。

 その強みは、自問自答してきた経験だろう。為末氏は、「『学び』には、構造を説明したものとストーリーで語られるものの2つがあるが、ストーリーの威力は腹に落ちやすいこと。アスリートは自分の身体と向き合いながら知識と実践を繰り返してきた」と説明した。

 筆者は「自分ブランド」という言葉を思い浮かべながら、一連の話を聞いていた。この2人のように「サラリーマン(実業団選手)」を辞めて「フリーランス(プロ)」となった場合、自らの強みを武器に世間に訴求して成果を挙げないと、やがて活動が行き詰まる。

 その意味で、競技生活引退後の「第2の人生」も参考になりそうだ。第2の人生といえばこれまで、サラリーマンの定年後の暮らしが強調されてきたが、「新たな活躍」という視点で考える時代となっている。

 5年先や10年先、「勤めている会社に人生を委ねられるか」わからない時代――。たとえば、失敗から学んだ方向転換などを論理的に説明することができて、初めて「アスリートの話」が輝くように思う。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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