渡辺喜美こそ類まれな優れたリーダーだった！リーダーはこう「ダメ」になっていく！

部下に信頼される上司

　本書で江口氏が述べたいのは、経営発展には「目に見えない要因」が重要だという点だ。すなわち「いかに人を生かすか」という点に尽きるだろう。確かに松下氏は人の力を最大限に生かすことで、「松下王国」を築き上げた。その根底には、人への尊敬と感謝があった。松下の製品をつくるのは人であり、使うのも人だ。これらがなければ、多くのヒット商品は生まれなかった。

　前書きで、江口氏はこう述べている。

「渡辺喜美という人に、ここでまとめた『目に見えない要因』を伝え続けたが、伝えた通りに実行されていたら、『党の崩壊』はなかったと思うとともに、指導者、上司の読者の皆さんには、これを他山の石として、ぜひ、実行、実践していただき、ますます部下から信用され、ますます活躍をされて、大きな成功を収められることを心から願っている」

　実は発売前にこの本を渡された時、江口氏がぽろりとこう言った。

「この本を岡田（克也民主党代表）さんに読んでもらえないかな」

　もちろん冗談半分に違いないが、その後に維新の党のある議員に本を見せたところ、「江田さんにも読ませたほうがいい」と言われた。こちらはどうやら本気のようだった。

　誰もが自分の上司に読ませたい本であるとともに、いま上司の立場にいる人、これから上司になろうとする人にとっても必読の書といえるだろう。
（文＝安積明子／ジャーナリスト）