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日産、巨額の利益が仏ルノーに吸い取られる状態放置…仏政府との熾烈戦争の舞台裏

文=河村靖史/ジャーナリスト
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 このため、両社はルノーが保有する日産の株式を40%以下に引き下げて、日産が保有するルノー株式に議決権を持たせることを検討。しかし、フランス政府はルノーの重要な資産である日産の株式を手放すことに反対を表明する。そこで、両社は日産がルノーの保有株式を25%以上に買い増すことを検討した。日産が25%以上の株式を保有すると、日本の会社法の規定で、ルノーの保有する日産株式の議決権をなくすことができるためだ。

 両社は、フランス政府の経営介入を回避するための方策を相次いで検討するとともに、一部マスコミにリークすることでフランス政府をけん制してきた。

 最終的に、両社とフランス政府は今後の経営に関して合意した。その内容は、フランス政府はルノーの同国内での戦略的決定事項など特別な案件にのみ議決権2倍を行使できるが、その他の案件ではフランス政府の議決権は制限される。ルノーは日産の経営に干渉しない方針を正式に認め、保有する日産株式の議決権を保持する。日産は、ルノーによって不当な干渉があったと判断した場合、ルノーへの出資比率を引き上げてルノーの議決権をなくさせる権利を持つというもの。

不平等条約は変わらず

 日産の西川CCOは「5年先、10年先、ゴーンCEOの次の世代でも経営の自立性を維持して安心して仕事ができるベースをつくった。株式の持ち合い状況は変えないがフェアな形で将来を担保できた」と今回の合意内容を評価する。

 フランス政府と両社は、今年春から攻防を繰り広げてきたが、結果的に保有する株式に変動はないかたちで幕を閉じることになった。同時に、ルノーが保有する日産株式には議決権があるにもかかわらず、日産が保有するルノー株式には議決権がないという「不平等条約」問題が解決に向かうチャンスでもあったが、問題先送りとなった。

 日産は業績悪化による倒産の危機に直面し、ルノーの出資を受けて短期間に経営再建を果たした。しかし、経営再建後は日産が業績を伸ばす一方で、ルノーの業績は低迷。日産は高額な配当でルノーの業績を黒字化するなど、経営を支援してきた。今後も、この関係は継続されることになる。結局、一連の騒動の勝者はルノー、そして両社トップの地位に君臨し続けて巨額な報酬を得るゴーン氏だったのかもしれない。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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