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吉田潮「だからテレビはやめられない」(5月12日)

オダギリジョー、なぜ突然、各局連ドラに頻出?低視聴率の禊を済まし、俄然“風味”活かす

文=吉田潮
オダギリジョー、なぜ突然、各局連ドラに頻出?低視聴率の禊を済まし、俄然“風味”活かすの画像1『リバースエッジ 大川端探偵社』公式サイト(「テレビ東京 HP」より)

 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

「春のオダギリジョー祭り」である。売れないロッカーがある日突然、父親になってしまう悲劇と喜劇を描いた『家族のうた』(フジテレビ系/2012年放送)で、とんでもない低視聴率を叩き出し、さんざんな目に遭ったオダジョー(個人的にはあのドラマ、子供に媚びない素直さがすごく好きだった)。以来、各局が「オダジョー主演ドラマ」にビビって手を出さず、まるで主犯格のように扱われてしまったのだが、禊を済ませて帰ってきた。

 今クール(4~6月期)の連続テレビドラマでは、あちこちでオダジョーの姿を観ることができる。まず、なんといっても主演作『リバースエッジ 大川端探偵社』(テレビ東京系/毎週金曜深夜0時12分放送)。「すんちゃッ、すんちゃッ」とオサレな音楽、良心的なエロの範疇ギリギリの映像、壁に飾られた巨大な歌川国芳の骸骨絵。無精ひげと紫煙とエロ・グロ・ナンセンスが許される深夜枠である。

 東京スカイツリーを入れたいがために、根拠も必然性もなく下町を舞台にしたような駄作ドラマと異なり、浅草界隈の淫らなカッコよさと、下町ならではの排他性と陰険さも描き出している作品だ。こういうときにオダジョーの風味は俄然活きてくる。かといって、今回は「むき出しな役柄」でないのもちょうどいい。探偵社の所長が石橋蓮司というのも至極まっとうに正解だ。この合致感を実現してくれるのは、絶対テレ東だと信じていた。この枠、「ドラマ24」は時々大ハズレするのだが(煮ても焼いても食えないアイドルの養成訓練みたいなヤツ)、基本的には絶品が多い枠でもある。たぶん『湯けむりスナイパー』(09年放送)あたりから頭角を現し、他局には決してできない「ガキはお断り」ラインを築いてきた。

 これだけでも満足なのだが、オダジョー株は他局でも急上昇しているようだ。上野樹里主演『アリスの棘』(TBS系/毎週金曜夜10時放送)では、病院関係者に復讐をしかける上野を陰ながら支える新聞記者の役を演じている。「いやいや、アンタもデマ記事書いて、上野の復讐対象じゃないの?」と思いつつも、物語においては非常に重要な役どころだ。

 もうひとつ、尾野真千子主演『極悪がんぼ』(フジテレビ系/毎週月曜夜9時放送)でも、限りなく黒に近い刑事役(アロハを着ているので「アロハデカ」と勝手に命名)である。ここでの役柄は、ま、かけもちバイト感覚といったところか。それにしたって、まさにオダジョーファンにとっては至福の春。

エッジを効かせることに成功

 ちょっと前までは、微妙なテロリストとかアメリカ帰りの宣教師とか演じていたのだが、しっくりこなかった。作品自体がしっくりこなかっただけかもしれない。今期はいい感じの露出で、大きな期待はされないものの、エッジを効かせることに成功している。

 ここまで書いておいてなんだが、私はオダジョーファンではない。オダジョーがオダジョーらしくオダジョー的立ち位置で最大限に活かされることを願うだけで(リンカーンの演説か)、目を輝かせるほど好きではない。鈍牛倶楽部所属の俳優が、わりと好きなだけ。

 同時期に放送するドラマで、あちこちに頻出するのはいかがなものかと思う人もいるかもしれないが、今期の各局の合言葉は「ちゃんとした俳優をちゃんとしたかたちで登用させる」なのだろう。頻出なのはオダジョーだけでなく、香川照之や滝藤賢一、古田新太、遠藤憲一も同様だ。

 個人的に気になっているのは、眞島秀和である。ここ最近、妙に遺影で登場してくることが多い気がしてならない。以前、芝居のできない佐々木希が「遺影女優」として名を馳せたが、眞島は芝居ができる俳優だ。故人役ニーズの急上昇。謎である。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

吉田潮

吉田潮

ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。東京新聞でコラム「風向計」執筆。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)などがある。

Twitter:@yoshidaushio

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