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雨宮寛二「新・IT革命」

アマゾン、なぜ実店舗にも本格参入? 2千万人の大学生取り込み狙う

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サイト「アマゾン」より
 アマゾンがオフライン(実店舗)の攻勢に出ている―――。

 アマゾンといえば、通販サイトに象徴されるように、従来オンラインの世界で事業を展開してきた。だが、2015年11月に米シアトルに実店舗「Amazon Books」を開設したように、書籍に加えアマゾングッズなどの商品を陳列することで、オフラインでも精力的にアマゾンの知名度をPRしている。


 アマゾンとしては、実際に本や商品を手に取ってもらう「リアルさ」、すなわち「試用体験」を重視してオフラインの攻勢に出ているわけだが、通販サイトで販売した商品の受け取り拠点としても、オフラインを拡張する戦略を取り始めている。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 その一環として進めているのが、米国の大学キャンパスを受け取り拠点として活用していくという動きである。アマゾンは15年2月に、米パデュー大学にスタッフが対応する初の受け取り拠点を開設した。

 先頃も、5カ所目の受け取り拠点を米カリフォルニア大学バークレー校に開設した。この拠点は、「アマゾン@ASUCスチューデントユニオン」と呼ばれ、大学のマーチン・ルーサー・キング・ジュニアビルの中に延床面積3,500平方フィートを確保してつくられた施設である。ここにはスタッフが常駐し、毎日午前9時から午後9時まで営業している。

 この施設では、基本的に誰でも受け取りサービスを享受できるが、とりわけアマゾンスチューデントやアマゾンプライムの会員は、アマゾンの通販サイトで注文した200万以上の商品を即日受け取ることが可能となる。

 他方でこのASUCスチューデントユニオンは、これまでに開設した他の大学内の拠点と異なり、タブレット「キンドルファイア」や人工知能スピーカー「エコー」といったアマゾンの最新機器を試すことができるエリアを併設している点が特徴である。

 こうした最新機器をバークレー校の在籍者約4万人の学生に試供することで、アマゾンの知名度を学生の間で高めるというのが、その狙いである。試用体験を積み重ねることこそ、普及につながるというわけである。

 アマゾンは同様の体験エリアを併設した受け取り拠点を年内にカリフォルニア大学デービス校とペンシルバニア大学にも開設する方針を打ち出しているが、究極的には、米国に在籍する約2,000万人の大学生をアマゾンのバリューネットワーク(エコシステム)に囲い込んでいくことが、その目標となろう。

 オフラインでの囲い込みは、すでに消費者をレイヤーごとにデマケーション(区分)して攻略するステージに進みつつある。ボリュームの大きなレイヤーとして、いかなるターゲットが次なる戦略に当てはまるのか、注目である。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)