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マイナス金利、景気が崖から突き落とされるように悪化の危険も…窮地のアベノミクス

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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 そうした状況を考えると、日銀は新しい対策としてマイナス金利を打ち出さざるを得なかったのだろう。マイナス金利を導入することで、今後はそのマイナス幅を増やすという選択肢も生まれてくる。

 今回の日銀のマイナス金利導入の最大の理由は、海外経済の不透明感が増していることだ。すでに昨年下旬以降、米国の製造業の景況感は悪化し、耐久財の受注も落ち込んでいる。FRB(米国連邦準備制度)も緩やかな利上げを正当化する程度のペースでしか景気が回復しないとみているようだ。

 原油価格や中国経済の動向も気がかりだ。今後も金融市場は不安定に推移する可能性が一段と高まっている。これから株価の下落や円高が進むと、国内の景気に対する懸念は高まるはずだ。それに歯止めをかけ、物価上昇への強い決意を示すためにも思い切った政策が必要だった。そのため、日銀は一種の劇薬ともいえるマイナス金利の導入に動いた。

正念場を迎えるアベノミクス

 
 今回のマイナス金利導入で、日銀はわが国の物価を上昇させることができるだろうか。そこには疑問符が付く。黒田バズーカは円安や株価の反発などにつながり、一時的には景気に明るさをもたらした。しかし、原油価格の上昇などもあり、物価は日銀が予想したほど上昇しなかった。

 むしろ、過度に追加緩和が進み資金があふれると、急速に投資資金が不動産など特定の市場に流入しバブルが発生する恐れもある。バブルが形成されている間には景気は上昇するが、一旦バブルが破裂すると、不良債権や過剰設備などの処理で景気が崖から突き落とされるように下落する。長い目で見れば、バブルは景気にマイナスだ。金融政策のプラスとマイナス、両面の効果がある点は忘れるべきではない。

 日銀が設定した物価目標率の達成が危ぶまれることは、わが国の経済政策であるアベノミクスが正念場を迎えていることを意味する。アベノミクスは主に金融政策を用いて、円安や株高の流れをつくり、企業業績の回復や賃上げを支え、それなりの効果を上げた。

 しかし、足元で海外経済の不透明さを背景に、アベノミクスの効果は徐々に低下してきた。今最も必要なことは、金融市場の期待を高める対策ではない。長期的な金融政策の方向を示して、一定の期待を維持しつつ、労働市場の改革や規制緩和、さらには社会保障制度の改革などの構造改革を進めることだ。それが、当初のアベノミクスが目指した成長戦略の本来の姿だ。

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