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民泊解禁、トラブル急増で人々の日常生活を破壊?先行の大田区、ドヤ街化のおそれ?

文=編集部
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 日本政府観光局のまとめによると、2015年の訪日外国人数(推計値)は前年比47.1%増の1973万7400人となり、3年連続で過去最多を更新した。

 円安や訪日ビザの発給要件緩和、格安国際航空路線拡充などを追い風に、中国などアジアを中心に訪日ブームが続き、15年は1964年の統計開始以降最大の伸びを記録。1000万人を突破した13年から2年でほぼ倍増した計算。政府が20年の目標として掲げる2000万人に、あと一歩と迫った。

 その一方で、訪日客の急増に対応し得る宿泊施設が不足している。特に東京・大阪などでは逼迫した状況にある。

 そうした問題の解決策として民泊が期待されている。民泊は、個人の住宅やマンションの空室などを宿泊施設として利用するもの。訪日客の急増に伴う宿泊施設の不足を補うとともに、観光による地域振興の一助にもなる。新たなビジネスチャンスとして産業界から注目されている。

大京は民泊物件を購入、京王電鉄は民泊仲介会社に出資

 羽田空港がある東京都大田区議会は国家戦略特区法に基づき、昨年12月に特区民泊を認める条例を可決した。2月中にも実際の民泊が始まる見通しだ。

 民泊事業に参入する企業が相次いでいる。「ライオンズマンション」を展開する大京の子会社で、仲介会社の大京穴吹不動産は特区施行後に大田区に民泊事業を申請し、今春にもサービスを始める。

「第1弾として、京急蒲田駅から徒歩10分程度にある2階建て住宅を購入した。4LDKで延べ床面積は100平方メート超あり、今後改装する。4~5人が宿泊でき、キッチンで自炊も可能という。宿泊予約は自社サイト『旅家』で受け付け、クレジット決済で宿泊料金を受領する。カギの受け渡しなどの事務は協力会社に委託する考えだ」(1月19日付日本経済新聞記事)

 京王電鉄も民泊事業に参入する。民泊予約サイトの運営会社、百戦錬磨の第三者割り当て増資を引き受けた。京王電鉄傘下の京王不動産が沿線を中心にマンションや戸建て住宅など5000戸を管理しており、大規模改修(リノベーション)会社もグループ内にある。京王線沿線の高尾山口駅(八王子市)の隣に日帰り温浴施設を開業するなど、外国人観光客の誘致に力を入れている。

 現在、一般的な民泊は旅館業法に基づく許可を得る必要がある。特区での実績を踏まえ、今後、旅館業法の規制緩和で民泊が各地に広がる可能性がある。京王電鉄は百戦錬磨への出資を通じ、民泊事業に必要な周辺住民とのトラブルを防ぐ体制づくりや、宿泊客の本人確認の方法などについてのノウハウを得る。グループで管理するマンションなどの有効活用が狙いだ。

民泊仲介の百戦錬磨は上場を目指す

 京王電鉄が出資する百戦錬磨はICT(情報通信技術)ベンチャーだが、民泊仲介サービス会社として17年3月期中の上場を目指している。

 代表取締役社長の上山康博氏はソーシャルゲームKLabの出身。取締役事業本部長を経て、07年9月、楽天トラベルの執行役員(新規事業担当)に就任。12年に同社を退社。同年6月百戦錬磨を設立し、社長に就任した。

 百戦錬磨とは風変わりな社名だが、同社のホームページによると「百戦錬磨の人間が集まった会社という意味ではなく、自らの仮説を実証するために百戦しようという会社」と説明している。ICTを活用して、旅行需要・交流人口の拡大を目指している。

 同社は旅館業法の規制対象外の農家での宿泊を仲介する事業で実績がある。民泊事業を展開するグループ会社の「とまれる」は昨年12月、国家戦略特区で認定される民泊向けの仲介サイト「STAY JAPAN」を開設した。当面、100物件以上の登録を目標にしている。

 とまれるは、大田区の住宅の物件登録の受付けをはじめ、民泊に必要な申請業務などを請け負う。複数のチェックカウンターをつくり、鍵の受け渡しや対面での本人確認を代行する。

 民泊サービスのルールづくりについて議論する厚生労働省主催の「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」は、上山氏からヒアリングした。上山氏は国家戦略特区における民泊や農家民泊に限定した範囲で少しずつ事業を拡大していることを強調。法律は順守しているとした。しかし、現在の市場では脱法業者による「ヤミ民泊」が横行していると指摘。今後は仲介業者への規制を強化してヤミ民泊を撲滅することと、実効性のある規制制度作りを行うことを提案したという。

 民泊のルールづくりの焦点は、(1)需要が本当にあるのかどうか、(2)安心安全をどう担保するのか、(3)近隣とのもめごとが起きた時にどう解決するか――の3点だ。民泊条例を可決した大田区では、民泊施設によって外国人労働者が住むドヤ街になるのではないかといった懸念が出ている。

 百戦錬磨は果たして上場できるのだろうか。旅館業法が規制緩和され、民泊が特区から他地域に広がるかどうかにかかっている。

民泊専門の不動産会社も誕生

 民泊の利用者は、外国人旅行者が圧倒的に多い。宿泊客の募集やトラブルへの対応で外国語が必要になるケースも多い。清掃や室内のメンテナンス要員もいる。個人で民泊を運営するのは意外と大変で、民泊専門の不動産会社が相次いで誕生している。古い物件やオフィスを民泊の施設に変身させる仕事も民泊専門の不動産会社がやってくれるという。

 政府は民泊を2段階方式で全国に解禁する方針だ。

 まず今春にも住宅をカプセルホテルなどと同じ「簡易宿所」とし、自治体が営業を許可する仕組みをつくる。厚生労働省が3月末までに政省令を改正する「簡易宿所」のひとつとして営業許可を得た民泊を合法と認める。2月から大田区で始まる予定の国家戦略特区に続き、今春から全国で民泊ができる態勢にする。

 旅館業法では延べ床面積33平方メートル未満の営業を禁止しているが、民泊では特例として認めてワンルームマンションなどで営業できるようにする。

 第2段階では、住宅地でのサービスを禁止するなど制約の多い旅館業法から民泊を除外するために法整備を行うという。個人が民泊を手掛けやすくするよう新法の制定を含めて対応。16年度(17年3月末まで)に法体系を変える。

 規制を緩和すれば20年の東京五輪に向けて「経済効果は10兆円」などという試算もある。

 Airbnb(エアビーアンドビー)など、民泊のインターネット仲介業者をどうするのかといった問題は残る。インターネット仲介業者を登録制にするだけで大丈夫なのか。住宅地での民泊が大手を振ってできるようになれば近隣トラブルが急増するだろう。

 現在の民泊の主体は違法状態の個人の貸し手である。個人の貸し手が「簡易宿所」の許可を得ることは少ないとの指摘もある。

 政府が民泊にお墨付きを与えることによって、これまで隠れていた違法業者が大手を振って営業をすることになると、事故が起こる危険も増大する。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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