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田中洋「マーケティングのキーインサイト」

スタバやナイキ、なぜあえてブランド名を「隠す」?自社を否定し成長する卓越戦略

文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授
スタバやナイキ、なぜあえてブランド名を「隠す」?自社を否定し成長する卓越戦略の画像1スターバックスの店舗(撮影=編集部)

デ・ブランディングとは

 デ・ブランディング(debranding)とは、ブランド名を使わないブランド戦略のことです。ある場合には、ブランド名を使わずロゴやマークだけでマーケティングを行うケース、また、親ブランドを隠すブランド戦略もここに含まれます。

 このコンセプトが話題になったのは、コカ・コーラ社の「Share a Coke(コークをシェアしよう)」キャンペーンにおいてです。2011年にオーストラリアで発案・実施され、13年に英国など欧州と日本で、14年に米国で、また15年にはタイなどのアジア諸国でも展開されています。日本では人の名前ではなく西暦の年号が入れたイヤーボトルの年にヒットした曲を中心に10曲がプレゼントされる「Share a Coke and a Song」というかたちで展開されました。

 このキャンペーンでは、ふだんコカ・コーラのロゴが記載されているラベルの中心部分に、購入者がBettyやJeffといった人のファーストネーム、あるいはFriends やFamilyといったなじみのあるワードを書き込むことができる「ネームボトル」が使用されました。このキャンペーンは世界的に成功をおさめました。

 驚くべきことは、巨大なソフトドリンク市場をもつ米国で、コカ・コーラは14年の8月までの12週間に、売上量で0.4%、売上金額で2.5%も増加させたことです。売り上げが下降し続けてきたこの11年間で、初めてそれが上昇に転じた出来事だったのです。つまりコカ・コーラにとっては画期的なキャンペーンだったといえます。

なぜ成功したのか

 成功のひとつの要因は、パーソナライズされたボトルが、フェイスブックやツイッター、ピンタレストなどのSNSなどで写真付きで拡散され、口コミを通じて話題が喚起されたことにあります。

 ある若者は「結婚してください」というプロポーズの言葉をこのボトルでつくり、それを冷蔵庫に並べ、ガールフレンドにそれを発見させて成功したというので話題になりました。また、ちょうどロイヤルベビーが産まれた英国ロンドンでは、ピカデリーサーカスに「Share a Coke with Wills and Kate」というデジタルサインが掲示されて話題になりました。つまり、ボトルに記された企業名ではなく「パーソナルタッチ」が、消費者に大いに受け入れられたのです。

 前述のとおり、これはデ・ブランディング=ロゴからブランド名を消したキャンペーンの成功事例として、のちに語られるようになりました。

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

京都大学博士(経済学)
日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。
1975~1996 21年間、㈱電通勤務。
1996~1998 城西大学経済学部助教授
1998~2008 法政大学経営学部教授
2003・4年度コロンビア大学ビジネススクール客員研究員
2008~2022 中央大学ビジネススクール教授
2022~ 中央大学名誉教授
元・東証一部上場・ソウルドアウト株式会社社外取締役
関心領域:マーケティング論・ブランド論・広告論
田中洋 中央大学ビジネススクール教授のオフィシャルサイト

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