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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(3月1日)

独身隆盛、マス消費消滅、多様すぎる価値観…「正当な理由」がないと買わない消費者たち

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 都市部の消費者は、教育レベルも高く、またネットのお陰で情報だけはたくさん持っている。しかも、不確実な社会において常に不安を感じている。不安があるということは、選択できなくて迷うことでもある。だから、消費においても自分の購買行動を正当化して自分を納得させる理由を必要とする。ちょっとしたきっかけで、そういった理由が見つかれば購買を決めるのだ。

 そのきっかけ(=動機づけ)とするためのアクションが、「低価格」や「ポイント付与」だけでは企業として知恵がない。レポートの(4)(6)に当たる「自分は社会に善いことをしている」、また(6)(7)(9)に当たる「自分や家族の安全を守るには必要」などと思ってもらえるような価値を提供するのも重要なきっかけとなる。

コンテンツマーケティングが注目されるワケ

 では、こういった価値提供が効果的である消費者を見つけるにはどうすればいいのか。その答えがコンテンツマーケティングだ。すなわち、昨今コンテンツマーケティングが注目されている理由はここにある。

 とらえどころのない消費者を見込み客として捕まえるのがコンテンツマーケティングだ。ターゲットとしては、あまりに規模が小さく、マスメディアによるマーケティングでは効率が悪い。そういったミクロなセグメントの場合は、企業が客を見つけるのではなく、客のほうから企業を見つけてくれるような仕組みが必要だ。そこでコンテンツマーケティングが力を発揮する。

 レポート(10)に、「旺盛な消費をみせる独身者」とある。これに対応して、ヨーロッパのクルーズ会社は、一人用の船室を増やしている。ホテルも、一人用のシングルでスペースも広く設備も贅沢な客室を増やしている。

 独身者といっても若いとは限らない。配偶者に先立たれた人もいる。また、独身者でも30代半ば以降ならば、ある程度の年齢になった甥・姪がいる場合もある。こういった甥や姪を連れて旅行に出ることもある。それぞれが、ミクロなセグメントをつくる。各セグメントの客のプロフィールやライフスタイルを想像して、彼らがするであろう旅に役立つ情報やストーリーをブログやホームページに掲載する。

 たとえば、一人旅を考えている客が次のようなキーワードで検索する。「一人旅、大阪、静かなホテル、広いシングルルーム、24時間ルームサービス」。この検索によって、過去にホテルを訪れた30代の女性の経験談が1ページ目の上位に紹介される。――このホテルは宿泊客に感想文を募り、読み物として面白い感想文はホームページに掲載し、書いてくれた客には宿泊券を提供している――。自分と同じような好みを持つと思われる女性の経験談を読んで、「このホテルは自分にぴったりだ」と感じた客は、そのまま予約ページにアクセスする。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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