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小林敬幸「ビジネスのホント」

なぜマスコミは経済音痴なのか?円高&原油安=悪のデタラメ、支離滅裂な解説だらけ

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 今回、110円程度の円高で、マスコミはまた円高を厄介者のように扱っている。支離滅裂の典型的な例だ。しかし、一般の人は、円高だからといってそんなに悪影響は出ないとすでにわかっているので、そういう報道を見ても首をかしげて反応しなくなっている。

米国経済不振

 今、世界の主要国のなかで一番経済の調子がいいのは、アメリカだろう。米国>日本・欧州>中国>ロシア・ブラジルといった順ではないだろうか。アメリカの新聞は、これまで順調だった状態に比べ、海外の経済不調により自国の経済成長が鈍化することを懸念している。自国のことだから、過去との比較で重くとらえるのは当然だ。しかし、それをそのまま日本の新聞が取り上げて、世界のなかでもアメリカの不調が目立つかのように報道すると、ミスリードしてしまう。

 また、米国の利上げによって経済の不振が懸念されるというのは、妙な話だ。アメリカは先進国で唯一利上げを検討する余裕がある、と理解するべきだ。今後、「先行きが懸念される」ような状況なら、利上げもしないだろう。

株安

 今の日本では、短期的な株価の変動は、日本の経済状態を図る指標としては必ずしも適当ではない。日本の株式市場の大きなプレーヤーである外国の投資家は、他国で運用している資金が減ってくると、日本の株を売って資金を手元に引き戻したりする。日本企業の業績先行き予測のみで動いているわけではなく、産油国などの海外投資家の懐事情にも影響を受ける。この短期的な動きは、日本経済の状況と必ずしも連動していない。

 米国の金融当局も、公には雇用情勢やインフレを注視して政策判断をするとしており、株価にあまり言及しない。短期的な変動が激しくて、経済状態を見る指標としては、相応しくないからだ。

 一方、安倍首相は政権初期に株価が上がってきた頃に「株価上昇はアベノミクスの成果だ。結果がすべてだ」と威張ってしまった。その頃筆者は、株価ほど不安定な経済指標に、安定している自らの政権の浮沈をかけるなんてセンスのないことだ、と思ったものだ。現在、安倍首相は株価には言及せず、「総雇用者所得が増えた」と主張している。批判者は、「株価は下がりましたよね。以前におっしゃった通り結果をみましょうよ」と言えてしまう。非建設的な議論である。

 このみっともなさの反省をして、今後の政権担当者は、株価の上昇を自らの政策の成果だと軽はずみに威張らないようにしてもらいたいものである。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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