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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

世界の工場・中国、なぜ技術者が育たない?判断要する開発やチームワークが無理、サボる

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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 したがって、坂本氏は世界初のDRAM専門ファブレスに挑戦するということになる。HPの「サイノキングテクノロジーのねらい」には、そのことがターゲットとして明確に記載されている。

「(1)直接の量産ラインは持たず、生産会社への技術提供で利益を得ていくビジネスモデルとし、メモリーの市場価格変動に左右されない安定した収益を実現します。このことによって、常に最先端の開発環境が維持できるよう、投資ができます。この会社が開発したDRAMは、世界中の会社に技術供与されます」

 そして、莫大な投資が必要な量産工場には、豊富な投資資金を用意している中国を活用するのである。さらに、ファブレスの柔軟性を生かして、

「(2)JEDEC標準に捕らわれないApplication specificなメモリーを作っていきたいと考えています…(中略)…不要なスペックを削り、お客さんが必要としているものを実現することに特化し、もっとメモリーを作りやすいものにしていきたいと考えています。この事により、既存のメモリ会社と競争するのではなく、むしろ潜在的なDRAMの需要を掘り起こし、既存のメーカーにとっても市場拡大と言う形で貢献したいと思っています」

 JEDECとは、Joint Electron Device Engineering Councilの略で、半導体分野で規格の標準化を行っている業界団体のことである。基本的にDRAMをはじめとする半導体製品は、JEDECが定めた標準規格にそって設計開発される。JEDECの標準規格通りにDRAMをつくれば、どのような機器でも動作するかもしれないが、不要なスペックが含まれているかもしれないし、それによって不必要に高度な製造技術が必要になる可能性もある。

 これに対してサイノキングは、カスタマー(顧客)が要求する必要最小限のスペックのDRAMを設計開発すること宣言しているわけだ。

 世界初のDRAM専門のファブレス、カスタマーに特化したDRAMの設計開発、豊富な中国の資金の活用、とサイノキングのビジネスモデルは秀逸であり、期待は大きい。しかし、これを実現するには、大きな課題もある。

サイノキングの課題は何か

 一言でいうと、サイノキングの成否は、「1000人規模の(日台の)技術者集団を形成できるかどうか」にかかっている。(日台の)と書き加えたところがミソで、たとえ1000人の技術者を集めることができたとしても、そのほとんどが中国人だった場合、成功は覚束ないように思う。その理由を説明したい。

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