今年の2月は、予想通り暇だった。俗にいう「ニッパチ(2月と8月は景気が悪い)」で、売り上げは繁忙期の12月に比べて1日当たり5000円ダウン。月給にして、5万円以上も下がってしまった。
2月は、忘年会・新年会と続く年末年始が終わり、新年度が始まる前の端境期。覚悟していたとはいえ、店のシャッターが閉まり、閑散とする駅で乗客を待つ身の寂しさは、ほかの仕事ではなかなか味わうことのできないものだ。
そんなタクシー業界は、「労働時間が長い」「ノルマが厳しい」「苦情が多い」「酔客やタチの悪い客にからまれる」「腰が痛くなる」など、つらいことだらけだ。
最近、いわゆる“ブラック企業”の過酷な労働実態が話題になることも多いが、タクシードライバーからすれば、「そんなの、どうってことない」と感じるレベルの黒さばかりである。
「タクシーができれば、なんでもできる」
これは何も言いすぎではなく、実際、タクシードライバーは根性が据わること間違いなしの仕事だ。今回は、そんなタクシードライバーのリアルな姿をお伝えしたい。
厳しいノルマに追われながら20時間労働
まず、賃金形態はほとんどが歩合制だ。「月に50万円売り上げても月給は25万円にしかならないが、60万円売り上げれば35万円になる」という具合に、売り上げが上がれば歩合率も上がる仕組みとなっている。つまり、タクシードライバーは目の前に“ニンジン”をぶら下げられているようなものだ。
もうひとつ、売り上げの最低ラインがあるのも特徴だ。ノルマである「足切り」に達しないと歩合率がグンと下がり、最低限の給料しか得られない。
東京近郊のあるタクシー会社では、1日の足切りが3万円(税別、以下同)で、足切り以下では歩合率35%、3万~3万5000円なら45%、3万5000~3万8000円で48%、4万円でようやく50%、4万5000円以上で53%……と段階制になっている。
給料日の後や金土、ライバルの少ない日曜、雨の日なら4万円も難しくなく、5万円くらいは簡単に売り上げることができるが、そのほかの日は厳しい。ウイークデー(月~木)の1時間当たりの営業収入は、平均2000~2500円(東京近郊都市の場合)で、4万円に到達するには16~20時間かかる。