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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

日本一の究極の梅酒の秘密…超前衛的な酒造会社、積極的すぎる行動連発で売上25倍

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中野BCが開催する「梅酒BAR」の様子

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数ある経済ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 3月から4月は歓送迎会が多い時季だ。人事異動や退職による送別会、新人や異動者の歓迎会や同期会を実施する会社や部署、仲間が多いだろう。

 そうした飲み会で乾杯するお酒は、以前は「とりあえずビール」が一般的で、多くの人がビールで乾杯していた。今でもそうしている人も多いが、最近の飲み方は変わった。

 今回は和歌山県の酒類メーカー・中野BCの事例を紹介しながら、日本の生活者とお酒について考えてみたい。

酒類市場全体の消費が減るなかで倍増した梅酒市場

 酒席などで、「最近の若い人は酒を飲まなくなった」との声をよく聞くが、確かに数字で見ても、「成人1人当たり」の消費量が落ちている。2014年に発表された国税庁の「酒レポート」によれば、1992年度の101.8リットルをピークに減少し、12年度には82.2リットルと最盛期の約2割減となった。この間に成人人口は89年度の8920万人から12年度には1億384万人に増加し、少子高齢化が進んだことを勘案すると、若い人は酒を飲まなくなったという事実がデータからも裏づけられる。

 飲み方の変化も同データに表れている。89年に酒類全体消費量の71%を占めたビールが、12年には31.4%と半分以下になった(発泡酒等ビール風飲料を合わせても50%には届かない)。一方で、89年に1%程度だったリキュールと果実酒等が、それぞれ23.1%と3.9%に増大した。この間に、清酒は15.7%から6.9%に落ち込んでいる。

「私自身、一利用客として居酒屋や飲食店によく行きますが、周りを見渡すとワインや地酒、カクテルやチューハイ、クラフトビールなど、昔に比べて乾杯のお酒が多様化しています。当社は梅酒と日本酒、焼酎を製造していますが、最近は梅酒事業が好調で、10年前は10種類程度だった梅酒関連商品を現在は36種類に増やしました」(中野BC社長・中野幸治氏)

 梅酒市場は近年の健康志向も手伝い、酒類市場全体が縮小するなか、00年に比べて倍増した。製造元である同社の強みは、地元・和歌山県の特産品である「南高梅」を一括購入していることだ。この梅を加工し、他の飲料メーカーや菓子メーカーにも供給している。

「梅酒づくりでは現地加工できる強みを生かし、県内の契約農家などから仕入れた南高梅を選別しながら水洗いとアク抜きをし、鮮度を保つため、仕入れ当日には醸造アルコールに漬け込みます。その後は、梅酒の酸度や糖度の計測とテイスティングを繰り返して状況を把握し、約半年後に梅の実をいったん取り出します。さらにタンクごとに定期的に撹拌しながら、半年以上寝かせて完成します」(同社製造部長兼梅酒杜氏の山本佳昭氏)

 消費者の価値観や選択肢が多様化した現代では、良い商品をつくるだけでは不十分で、その商品がどう世の中に訴求するかが大切となる。同社もそうした取り組みを続けてきた。