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雨宮寛二「新・IT革命」

iPhone、減速鮮明に…初の前年比売上減、アップルは危機感から苦肉の戦略転換

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アップルのロゴ
 米アップルのマーケティング傾斜が加速化している――。


 アップルの収益構造は今や「iPhone頼み」。売上の7割を占めるiPhoneの減速は、アップル全体の減速を意味する。よって、アップルがスマホ市場でマーケティングの戦略性を高めるのは必然である。

 従来スマホ市場におけるiPhoneのポジショニングはハイエンドにあった。最近ではこのハイエンド路線を継承しつつ、画面の大型化で収益を上げることに成功している。すなわち、従来機の4インチモデルから4.7インチ、5.5インチモデルへのシフトである。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 だが、先頃アップルが発表した「iPhoneスペシャル・エディション(SE)」は、この流れに逆行するもので、画面の小型化によるローエンドモデルで新たな収益の創出を図ろうとしている。

 それでは、SEを新たにiPhoneの製品ラインアップに加えるアップルのマーケティング上の戦略はどこにあるのか。

 そもそもiPhoneのコンセプトは、初代iPhoneから一貫して「コンパクトスマホ」にあった。したがって、iPhoneフリークには小型サイズを好むユーザーが依然として多い。実際、2015年だけで旧型の4インチモデルは3,000万台売れている。

 今回SEを発売する狙いは、まさにこの需要を取り込むことにある。そのため、アップルはこの歯切れの悪いマーケティングミックスを戦略として選んだわけである。すなわち、価格を劇的に安くせず3~4割安程度に抑え、機能面では最新のA9チップを使い、その一方で3Dタッチは搭載せず、ストレージの上限を64GBに抑える戦略である。

両にらみの戦略


 このようにアップルが小型機への原点回帰を図る背景には、iPhone画面の大型化によるハイエンドモデルの成長が踊り場を迎えていることがある。今年1~3月期は、07年のiPhone発売開始以来、初めて前年実績を下回る見通しで、9月期の売上高見通しも平均して前年同期比3%減の2,273億ドルと、危機感を持たざるを得ない状況だ。

 こうした危機感から、アップルとしては一方では、先進国での小型サイズを好むユーザーをターゲットにしつつ、他方でインドや中国といったローエンド市場を見据え、これら新興国市場の巨大な需要の取り込みを図るという両にらみの戦略を採らざるを得ない。

 よって、劇的に端末価格を下げず、処理速度は上位機種と同程度に維持しつつも、最新の機能を外すことでユーザーが抱くiPhoneのハイエンドの値ごろ感を払拭するという戦術を選んだ。