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永井孝尚「企業の現場で使えるビジネス戦略講座」

日本発&世界的普及のユニットバスの秘密…不可能だったニューオータニ期限内完成を実現

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TOTO HP」より
 1985年公開の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をご覧になった方は多いだろう。主人公のマーティ・マクフライは、時計台への落雷により発生する強力な電力で55年から85年にタイムスリップしようとする。しかしその直前、さまざまなハプニングが連続して発生する。時計台に落雷するタイミングに、ギリギリで間に合うか――。まさに手に汗を握るシーンの連続だ。


 しかし、オリジナルのシナリオはまったく違っていたことをご存じだろうか。実は当初は、核実験場に行き、核爆発を利用して未来に戻るための電力を得てタイムスリップする予定だったのだ。しかし、100万ドルの撮影費用が必要と試算されて、この案は予算の都合から断念された。85年当時、CGは現在ほど使われていなかったため、実際に撮影が必要だったためだ。

 その後、新しいアイデアが生み出され、私たちがよく知っている落雷で未来に戻るシーンになったのだ。脚本担当は「結果として格段に良くなった」と語っている。

 これは新しい商品やサービスを開発したり、あるいは作品を制作する時に、私たちに勇気と励ましを与えてくれるエピソードだ。

 何か新しい価値をつくろうとする場合、必ずなんらかの制約がある。それは予算や納期、リソース、組織的な事情、あるいは人間関係などだ。まったく制約がないことは、ほとんどない。

ユニットバス誕生秘話


『そうだ、星を売ろう 「売れない時代」の新しいビジネスモデル』(永井孝尚/KADOKAWA)
 当然ながらビジネスの現場でも、同様の事例は多い。

 たとえば64年の東京オリンピック開催直前、世界中から集まる人々に宿泊施設を提供するために、ホテルニューオータニを17カ月以内に完成させることになった。しかし、大きなスケジュール上の課題が見つかった。客室に設置するバスルーム工事に大きな手間がかかるとわかったのだ。床に防水工事を施し、給水・排水の工事をして、それが終わるとバスタブを床に埋め込み、便器を付け、タイルを貼る、という作業を1044室行うためだ。しかしこの方法では、完成した頃にはオリンピックが終わっている。しかも1960年頃から各地で工事量が急増し、建築現場では人手が大幅に不足していたので、人海戦術も使えない。

 そこで東洋陶器(現TOTO)と日立化成工業(現ハウステック)は、事前に工場でバスルームの部品を成形して、工事現場で組み立てるというまったく新しい工法を編み出した。このおかげで1044室のバスルームが約5カ月間で完成し、無事間に合った。この方法はのちにユニットバス工法と呼ばれ、今では国内普及率は90%。全世界に広がっている。