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雨宮寛二「新・IT革命」

鴻海のシャープ買収、すでに波に乗り遅れている懸念…韓国サムスンとLGに大きく遅れ

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シャープのロゴ
 イノベーションを起こした後の企業経営ほど難しいものはない――。


 通常、企業は画期的な製品やサービスを開発しそれらが普及すれば、以降その製品やサービスの改良・改善に邁進する。なぜなら、それらの製品やサービスを定期的に改良・改善するだけで「食べていける」からである。

 その際に重要なのは、これまでに蓄積してきた知識や経験である。というのも、従来の知識や経験は、同じ次元の上でものごとを改良・改善するのに大いに役立つからである。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 だが、こうした連続的な企業活動にどっぷりつかっていると、新たに製品やサービスを開発するという活動に目が向かなくなってしまう。

 たとえば、これをテレビ事業で見てみると、従来テレビ業界ではソニーがリーディングカンパニーであった。ソニーは早くからブラウン管テレビを開発し、テレビ市場におけるリーダーとしてブラウン管技術の改良・改善に邁進した。

 そのため、薄型テレビの製品開発に後れをとり、薄型テレビの時代が到来するとソニーのテレビ事業は不振に陥り、リーダーたる地位を失うことになる。その転機となったのは、スーパーフラットトリニトロン管の開発である。このフルフラット化の開発はベガ(WEGA)ブランドの成功をもたらし、これを契機にしてソニーはますますブラウン管技術にどっぷりとつかることになる。

 その後ソニーはブラウン管技術という従来技術の次元の上でテレビ事業を展開し続けたため、新たな技術の開発に後れをとり、液晶パネル技術を搭載したブラビア(BRAVIA)の発売は、シャープのアクオス(AQUOS)発売後5年もの歳月を経過してからであった。

 その後もソニーはブラウン管技術に固執し、ブラウン管市場の需要減退に至るまでブラウン管テレビの生産終了を決断することができなかった。

 一方でシャープは早くからフラットテレビ開発に着手した。液晶技術を開発することで製品化に成功し、いち早くフラットテレビの需要を取り込み、一気にテレビ市場でのリーダーの地位を築いた。

 だが、シャープも例外ではなかった。シャープはその後液晶という従来技術の次元でテレビ事業を展開し続けたため、プラズマや有機ELといった新たな技術の開発に乗り遅れることになる。

従来技術と同じ道をたどる可能性も


 先頃、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ買収が決定した。ホンハイの狙いはもはや従来技術の液晶にはなく、有機EL技術の製品化を目指すことにある。アップルが2018年を目途にiPhoneに有機EL技術を採用することを見据えた戦略だ。