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サイゾー5月号「文学タブー」特別編

本棚にはコンプレックスと羞恥が潜んでいる――『夢をかなえるゾウ』『エリートセックス』『NUDITY 菅野美穂写真集』「本棚にあったらイタい本」

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【前編】はコチラ

――「人の家に行くとつい本棚を見てしまう」という人は多いと思うが、そのときに「うわ、この人こんな本読んでるんだ……」とドン引きされてしまう本も、確かにある。今回は、そんな「本棚にあったらイタい本」を、“我こそは”と一家言持つ文芸編集者、週刊誌記者、ライターら、ギョーカイ関係者に話を聞いた。無論、ここで扱うコメントは、あくまで独断と偏見に満ちた主観であることは、最初に断っておきたい。

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『Happy 20th birthday―広末涼子写真集』(マガジンハウス)

 前編では厨二病的な本、過去の自分を思い出させて恥ずかしくなる本を紹介してきた。同様に「背伸びをして手を出した難解な本」も、本棚に残っていると恥ずかしさがぶり返してくる。

「『業苦・崖の下』(嘉村礒多)は『俺こんな作品も読んだぜ!』と虚勢を張りたくて、講談社文芸文庫に手を出した本。結局読んでないのも恥ずかしい」(30歳/男性)という声もあったが、似たような経験がある人は多いだろう。次の人は『オイディプス王』(ソポクレス)を挙げた。

「『俺、ギリシャ古典読んでる』という顔したさで、学生時代に買いました。一応ちゃんと読みましたが、これを今でも本棚に残していること自体が、恥ずかしい。『見栄で本を読む/並べておく人』を日ごろ見下していながら、自分も大差ないのだということを見せられているようで……(でも捨てるほどの気概もない)」(30歳/男性)

 そして哲学書は厨二病的な過去を思い起こさせるものが多かったりもする。

「僕の場合は、哲学科の学生なら一度は通るキルケゴールの『不安の概念』『死にいたる病』ですね。今この2冊を並べて置いていると、メンタル不調を必要以上にアピールしている感じになるというか。隣に 『死に至る病 (まんがで読破)』まで追加すれば、むしろ笑いが取れるかもしれませんが」(41歳/男性)

 そのほか哲学書(?)としてはベストセラーになった「『超訳 ニーチェの言葉』(フリ-ドリヒ・ヴィルヘルム・ニ-チェ、 白取春彦)とかは哲学の本のようでいて、哲学から一番遠いところにある気がする」(35歳/男性)という声も。哲学書だとしても、入門書やエッセイに近いものとなると、薄っぺらさが漂って恥ずかしさが増してしまうのかもしれない。

「『人生に生きる価値はない』(中島義道)は、社会人一年目のクズ過ぎる自分を全肯定したくて読みました。結局、読んでいるうちに、著者のような『頭のいいクズ』と私のような『普通のクズ』の違いを実感して辛くなり、読むのも頑張るのもやめました」(24歳/女性)

 また、ジャンル自体が「置いておくのが恥ずかしい」と思われがちなのが自己啓発書だ。

「うちの本棚には中谷彰宏の本がありますが、これは人に見られたくないですね。著者はものすごい数の本を出していて、読者もそれなりにいるんでしょうが、『中谷彰宏の愛読者です!』と人前で言えるような人はどのくらいいるんでしょうか?」(41歳/男性)

 本をよく読む出版業界の人だと、「本棚に自己啓発書を並べること」は屈辱にも似た感情を呼び起こすようだ。

「『本棚に自己啓発本が置いてあるような大人になりたくない』と常日頃から思っているのに、本棚の正面に『夢をかなえるゾウ』(水野敬也)があって焦りましたね。たしかに仕事の資料のつもりで買いましたよ。読んだらどこにでも書いてある内容でしたけど、最後まで一気に読んじゃったし、けっこう納得しちゃうこともあった。しかも一度読み返したら、うっかり引き込まれたし……。『見せ方がうまいだけだよねー』と負け惜しみしか言えない自分の小ささを噛みしめる本ですね」(40歳/男性)

 文筆業の人であれば、仕事の資料で思想信条に反する本を本棚に並べることもあるだろうが、「『人間革命』(池田大作)なんて、全巻本棚に並んでいたら引くなというほうが無理」(41歳/男性)というように、いらぬ誤解を招く本もある。ただ、同書はあらゆる意味で名著だと言われているのだが……。