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雨宮寛二「新・IT革命」

自動車産業がグーグル1社の軍門に降る可能性が現実味…トヨタとの覇権争い始まる

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グーグルのHPより
 自動運転車といえばグーグルカーがよく知られているが、世界的な大手自動車メーカーでも現在開発が盛んに進められている。昨年10~11月に開催された東京モーターショーでは、日産自動車やホンダ、メルセデス・ベンツなど多くのメーカーが自動運転車のプロトタイプを披露している。


 こうした自動運転車の開発は、グーグルカーの開発が契機になっているのはいうまでもない。多くのメーカーがグーグルの動向を注視している。2009年にいち早く自動運転車の開発を開始したグーグルは、情報処理という自社の強みを活かしながら、自動運転技術の精度を高めてきた。走行実績はすでに240万キロを超える。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 将来的にこのグーグルの自動運転技術が実用化され標準化されることになれば、自動車産業はグーグルの軍門に降ることになりかねない。こうした危惧は、今や危機感へと変わり、自動車メーカーに圧力として大きくのしかかる。もはや、「グーグルカーは自社の“走る車”とは異なる哲学」と牽制している猶予はないだろう。

 こうした危機感を払拭するために、どのメーカーも自動運転技術の開発に注力しているが、なかでもトヨタ自動車は、自社の方向性を定める決定を今般打ち出した。それが、先日提携したマイクロソフトとの共同事業である。

 この新事業は、日本や米国で走行するトヨタ車のドライバーから了承を得て交通状況や路面の状態、さらにはドライバーの運転パターンなどの膨大な情報をビッグデータとして収集・分析し、結果をドライバーにフィードバックし役立てるというもの。ドライバーは配信されるリアルタイムの渋滞情報で渋滞を回避でき、運転の仕方に応じた自動車保険料の算出などが可能となる。

 トヨタは自動車メーカーでしか保有し得ないこうした運転情報などのビッグデータを活用することで、まずは今ある自動車の運転そのものに役立てるという方向性を選択した。それは「コネクテッドカー」実現に向けたIoT(モノのインターネット)戦略の一環でもある。より安全により快適に自動車を運転するための機能を充実させるというわけだ。

トヨタの方向性


 一方で実際に走行する車の膨大な情報は、将来的に自動運転技術の開発には必要不可欠となろう。なぜなら、自動運転の実用化を可能とする人工知能(AI)、すなわち深層学習能力を高めるために、こうした膨大な生データが極めて重要となるからだ。

 このようにトヨタは今回の提携により、注目度の高いビッグデータ分野でのサービスを強化する一方で、自動運転の実用化に不可欠なAI技術などへの応用を目指すポジショニングを鮮明に打ち出した。

 現在自動運転技術の開発は、グーグルや大手の自動車メーカーを中心に異なるアプローチから開発が進められている。将来的にいかなる自動運転技術が「破壊的技術」として世の中を席巻するのか、注目されるところである。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)