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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

「個人消費は経済のエンジン役」はデタラメ!GDPは経済の実像を表していない?

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「Thinkstock」より
 政府が個人消費の刺激に躍起になっている。今月開いた経済財政諮問会議では、民間議員がいくつかの施策を提示した。プレミアム付き商品券・旅行券を発行するほか、子育てサービスに使えるバウチャー(クーポン券)の導入などを提言。米国で定着する年末商戦「ブラック・フライデー(黒字の金曜日)」の日本版となる大規模セールを始めることも示した。


 いずれも、低迷する消費を刺激し、政府の掲げる「国内総生産(GDP)600兆円」を実現するための策という。

 政府が個人消費の喚起に懸命になるひとつの根拠は、GDPに占める割合が高いことにある。確かに統計上はそうなっており、そのため個人消費は「経済のエンジン」と呼ばれることもある。しかし経済の現実に照らして、個人消費は本当にそう呼ぶにふさわしい重みを持っているのだろうか。

経済の牽引役は個人消費という固定観念


 個人消費がGDPに占める割合をみると、世界一の経済大国である米国の場合、約7割に達し、2割足らずの政府支出や民間投資を大きく上回る最大の構成要素である。このため米経済はしばしば消費主導型であるといわれる。

 毎年米国で、「ブラックフライデー」に始まるクリスマス商戦の模様をメディアが過剰なほどに報道するのも、米経済の牽引役は個人消費であるという固定観念が背景にあるといってよいだろう。

 日本の場合、米国ほどではないものの、個人消費はGDPの約6割を占める。GDP統計が発表されるたびに個人消費の動向が注目されるのも、米国と変わらない。

 GDPは一国の経済状態を示す最も包括的な統計とされる。そのなかで個人消費が圧倒的に高い比率を占める以上、これを「経済のエンジン」と表現することに特段の問題はないように思える。だが、見過ごされている点がある。それはGDP統計のそもそもの仕組みである。

 一般にはほとんど知られていないが、GDPの計算方法は、英国の著名な経済学者ケインズの思想に強い影響を受けている。

 GDPの問題点を早くから指摘してきた米エコノミスト、マーク・スコーセンは『経済学改造講座』(原田和明・野田麻里子訳/日本経済新聞社/1991年刊)で、「ケインズによれば、一国の繁栄は基本的に経済の最終支出の合計、すなわち消費者、投資家、政府による支出の合計によって決定される」と説明したうえで、「この総需要という概念は、生産性、技術進歩、貯蓄が経済発展の鍵であるという古典的な見方ときわめて対照的」と指摘する。