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金子勝の「JAPAN is BLACK」第3回

大学卒業時点で借金6百万…過酷な奨学金返済で貧困転落続出 貧困で路上生活の若者も

構成=松井克明/CFP
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金子 15~24歳で非正規雇用は48%。つまりほぼ5割だから、奨学金を返済できず生活が困窮する人が増えるのも当然ですよね。

生田 また、ひとり親家庭、虐待家庭で育った人も多いです。いざというときに頼ることのできる家族がいないと、ささいなことでもたちまち生活に困ってしまいます。先日は、住民票を置く住居がないという女性から相談がありました。親との関係がよくないため、実家に帰ることもできない。そのため、住民票の提出を求められないアルバイトばかり選んで働いていたそうです。相談に来たときは、インターネットカフェで生活しており、バイト先にはそこから通っていました。野宿者ネットワークの関係者が運営しているシェルターに入ってもらい、そこを住所にして仕事を見つけることができました。親との関係が悪く非正規雇用、そんな人にトラブルがあると路上生活に直結しかねません。

金子 家庭というセーフティネットがない人は、行き場がないのですね。

生田 活動の2つめは、野宿者襲撃問題への対応です。野宿者を襲撃するのは主に少年グループで、暴行、エアガン射撃、放火などが全国で日常的に起きています。しかし、公的統計も存在せず、マスコミも報道することが少ないために、ほとんど知られていません。実は1970年代半ばから途絶えることなく続いています。

 背景には、野宿者に対する差別意識と社会の側のストレスの充満があると思われます。「ホームレスは怠け者で働かず、税金も払わずに広い公園を使っている」という思い込みが多くの人にあります。ただそれは、「自分は好きではない仕事をやらされ、狭い家に住み、高い税金を払っている」という意識を投影しているだけなのかもしれません。子供たちにも、「自分たちは学校に行かなくてはいけない、親のもとでしんどい。それに比べてホームレスは働かずのうのうと生きている」といった意識があるのかもしれません。このように考える人たちのストレスを解決しないと、野宿者への差別はなくならないのかもしれません。

知的障害者に対する社会の偏見

金子 ほかに考えられる要因はありますか。

生田 襲撃した子供たちをみると虐待家庭が多いようです。自分でも抑えきれない怒りやストレスがたまっていて、それが何かのきっかけに放出されるということがあるのです。集団でひとりの弱者を追い詰めるという意味で野宿者襲撃といじめは似ています。特に野宿者襲撃は貧困者に対するヘイトクライムとして、社会的に位置づけられるべきだと思います。

金子勝/慶應義塾大学経済学部教授

金子勝/慶應義塾大学経済学部教授

1952年生まれ。
経済学者・慶應義塾大学名誉教授・淑徳大学客員教授
経済問題のみならず、社会問題、企業経営、社会保障など幅広い分野で発言を続ける。研究活動の他、著書も『「脱原発」成長論』、『失われた30年』など多数あり。
アイドル好きな一面も。

Twitter:@masaru_kaneko

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