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雨宮寛二「新・IT革命」

iPhone販売減が深刻…アップルの成長神話が崩壊か、Apple Watchも不発

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アップルのロゴ
 4月26日、米アップルが2016年1~3月期決算を発表した。2003年以来13年ぶりの減収ということで話題になっているが、ティム・クックCEO(最高経営責任者)の決算での発言を聞くと、年間約2,000億ドルの売上を誇るアップルに危機感はないようである。


 減収の主要因は売上の約65%を占めるiPhoneの販売台数減少だが、遅かれ早かれ成長鈍化が訪れるのは必然である。実際には1年前にこの減少が訪れていてもおかしくなかった。というのも、iPhone 6 Plusによる画面サイズの拡大化といったラインナップの充実でその難を逃れてきたにすぎないからだ。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 他方、ハードで稼ぐアップルにとって、新たに画期的な製品を開発できなければ、必ず成長神話の崩壊は訪れるだろう。昨年満を持して投入したApple Watchは、四半期売上が推計で約10億ドルのレベルで、主力事業のiPhoneはおろかMac(今期売上高51億ドル)やiPad(同44億ドル)といった既存製品の穴を埋めるにも至っていない。

 アップルは基本的にハードに大きく依存するビジネスモデルをとる。グーグルのように広告料が日銭として常時入ってくるわけではない。それゆえ、ハード事業を手掛ける以上は、常に革新的な製品を開発し、創造的破壊の繰り返しが求められる。手元の流動資産が2,000億ドルともいわれるアップルにはそれができる十分な余力はまだあるが、工業デザイン部門主導によるデザイン思考の下でマーケティングに舵を切って久しいアップルにとって、新たな変化を捉えるのは難しいであろう。

 だが、光明も見えつつある。iTunesやApple Payといったサービスの今期の売上高は59億ドルに達し、前年同期比で20%の成長を遂げた。すでに世界で10億台以上普及しているアップルのデバイスでこれらのソフトがインストールされていることを考えれば、新たなサービスやソフトを拡充する余地は十分に残されている。

新生アップルの第一歩とは


 クックCEOも述べているように、現状では市場の成長や中国経済は芳しくない。これまで2ケタ成長が当たり前であったスマホ市場は、今年いよいよ1ケタ成長に突入する。だが、これまでにも逆風は吹いた。2007年に発売したiPhone はリーマンショックをものともしなかった。それは、iPhone が新たな変化を捉えた革新的な製品であったからだ。

 消費者は常にアップルに「革新性」を期待している。今期の減収がアップルにとって必然であることを認識するのが、新生アップルの第一歩となろう。デザイン思考だけでは革新は生まれない。まさしく今のアップルに対しては、「テクノロジーとリベラルアーツ(創造的発想)の交差点」にもう一度立ち戻ってほしいと創業者のスティーブ・ジョブズも願っていることであろう。なぜなら、その交差点でゼロから発想してこそ、革新が生まれるのだから。

 アップルは今年、創業40周年を迎えた。原点回帰にはちょうど良い契機かもしれない。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)