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アベノミクス景気回復、主要因は米国好景気…米中欧が同時減速の兆候、円安景気終了か

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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 しかし、14年年央頃からの原油価格の急落は、シェールガス開発を縮小させた。15年後半以降、米国の経済指標は強弱混合の状況にある。そして、原油価格の下落を受けて収入が減少したサウジアラビアなどの産油国は、ソブリンウェルスファンドを通して保有してきた日本株などの資産を売却し、収入の減少を補わざるを得ない状況に追い込まれた。中国の人民元の切り下げなどがリスクオフを喚起したことも記憶に新しい。これが、昨年来の世界的な金融市場の混乱を発生させた。

 そして、16年年初以降、ドル高が企業収益や輸出を圧迫し、米国経済の先行き不透明感が増しているとの懸念からドルの売り圧力が高まった。原油価格の下落は産油国や新興国の景気を悪化させ、各国の物価上昇の期待も押し下げた。その結果、米国の利上げ期待は低下してきた。それが、ドルの保有動機を低下させ、世界的なドル売り圧力を高めている。円高の背景には、わが国固有の事情よりも、世界経済の変容が大きく影響している。

原油価格の反発と円安の関係

 2月中旬以降、米国を中心に株式市場は上昇している。そのため、6月にはFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切るとの観測もある。過度な低金利観測へのけん制も含め、慎重なトーンを維持しつつも、FRBが利上げの可能性を仄めかすかもしれない。そして、こうした動きの背景には原油価格の上昇がある。

 現在、原油に対する需要は供給を下回り、過剰な供給圧力は強い。これまで原油を買い漁ってきた中国の経済成長率が低下するなか、サウジアラビアを筆頭とするOPEC(石油輸出国機構)加盟国、ロシアなどの非加盟国が減産に合意できていないからだ。

 そんななか、徐々に減産への期待が高まり、原油価格が上昇してきた。4月17日にドーハで開かれた会合では増産凍結への合意は得られなかったものの、6月のOPEC総会などで凍結が決定されるのではないかとの観測は高まっているようだ。これを受けて、ドーハ会合後、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は1バレルあたり44ドルまで値を戻し、物価上昇期待の高まりから米金利が上昇、ドルが買い戻されている。

 問題は産油国が増産凍結に合意できるかだ。必要だとわかっていても、それは容易ではない。OPEC内の関係は緩く、増産凍結が合意されても抜け駆けが出やすい。景気が低迷しているOPEC加盟国のベネズエラは、いち早く非加盟国のロシアに接近し、自国に有利な議論を展開しようとしてきた。

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