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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

食品、ありとあらゆる偽装が蔓延…生産~流通が完全「闇」化、騙され続ける消費者

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

摘発確率低ければ、偽装誘惑が増す

 そもそも、なぜ企業などの売り手は食品偽装をするのか。フードシステム論では、「品質間の価格差のあることが偽装販売の温床」【編注10】と見ている。

 これには、「高品質の製品は低品質のそれよりも高く売れる」と「高品質の製品のコストは低品質のそれよりも高い」という、2つの前提条件がある。そこで、この2つの条件を組み合わせて、低品質製品を高品質製品として偽装することができれば、低品質製品を低コストに加えて高い価格で売れ、企業はより大きな利益が得られる。

 しかし、偽装は食品表示法などに違反する犯罪行為であり、発覚すれば罰金や懲役刑などの刑事罰に加えて、損害賠償などの民事罰、さらに企業イメージ低下で売上高不振、倒産もあり得る。

 一方で、偽装をしても発覚しない可能性もあり、摘発される確率が問題となる。そこで刑事罰、民事罰、倒産などの社会的制裁をペナルティと呼び、経済学だからその費用が問題だとすれば、ペナルティ費用は摘発される確率によって変わるというわけだ。

 つまり、企業は摘発確率が低く、偽装によって得られる利益がペナルティ費用を上回れば、偽装をする誘惑が増す。逆ならば、その誘惑を抑えようとする。これがまさに偽装の経済学【編注11】だ。

 先に触れたように、ありとあらゆる偽装が可能な状態で、偽装を根絶することは不可能に近い。偽装を最小限にするポイントは、可能な限り摘発確率を高め、ペナルティ費用を格段に高くすることではないか。

 ただし、摘発確率を高めるためには、たとえば今回の再発防止策で、都道府県職員による産業廃棄物業者への立入検査を徹底的に、かつ頻繁に行なうとすれば、人件費など多額の税金を社会的コストとして投じなければならない。しかも、問題の核心をつかみ損ねているままで、摘発確率をどれだけ高めることができるのか。費用対効果が厳しく問われる。

 次回は、偽装を生む産業構造に迫る。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

【編注7】1.生源寺眞一『フードシステム論と現代日本の食料・食品問題』東京大学社会科学研究所「全所的プロジェクト研究 ガバナンスを問い直す」2011年1月、2.中嶋康博『フードシステムと食の安全・安心』NIRA「NIRAモノグラフシリーズ」2008年3月など

【編注8】壱番屋のHP「産業廃棄物処理業者による、当社製品(ビーフカツ)不正転売のお知らせ」2016年1月13日

【編注9】1.「食品表示基準」平成27年内閣府令第10号、2.消費者庁「新しい食品表示制度」、消費者庁「食品表示基準について」最終改正2015年12月24日消食表第655号

【編注10】【編注1】と同じ

【編注11】1.【編注1】と同じ、2.白石賢『企業不祥事防止策としての行政モニタリングと市場の競争状況』内閣府経済社会総合研究所「ESRIディスカッション・ペーパー・シリーズNo.135」2005年4月などを参考にした

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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