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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

販売減は業績にどれだけ影響するものなのか

 
 ここで筆者は、この販売減が三菱自業績にどれほどの影響を及ぼすかを試算したいと思います。同社(単体)の12年度業績データを用います。同社は損益計算書の細部(とくに製造費用)については、12年度までは製造原価明細書を公表していたこともあり、直近のデータよりも、経費細目を詳しく開示していたからです。12年度の三菱自(単体)の損益計算書は下記のとおりでした。

三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字の画像2

 実際に開示された損益計算書には、もう少し詳しいデータが開示されています。そのなかでも重要なのは、売上原価のなかに「他社からの製品仕入高」が「442,307百万円」、「原材料費」が「598,622百万円」、「運搬費」が「40,148百万円」含まれていることです。合計すると「1,081,077百万円」です。

 これらの項目は変動費です。変動費というのは、売上高が増加すれば費用も増加し、売上高が減少すれば費用も減少するという費用の項目です。この先、三菱自では需要減による売上減少が予想されますが、これら変動費の項目は、この先の需要減によって減少することが見込まれます。ここから先のシミュレーションは、かなりざっくりとした計算となることにご留意ください。

 この3つの変動費の合計は1,081,077百万円ですが、これは売上高1,383,389百万円のおよそ78%に相当します。変動費以外の項目は少し細かくなるので、あとの経費はざっくりと固定費とみなします。固定費というのは、売上の増減とは連動せずに生じる費用のことです。そうすると、上掲の損益計算書は以下のようにつくり変えることができます。

三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字の画像3

 これは何を意味するかというと、三菱自は1,383,389百万円の売上を獲得しましたが、その約78%である1,081,077百万円は変動費となり、差額302,312百万円の粗利益が獲得されることを意味します。ここから、固定費ともいうべき287,541百万円の費用が差し引かれて、営業利益は14,771百万円となったことを意味します。

 ところで、三菱自の直近の15年度の売上高は、1,806,047百万円でした。しかしながら、前述したように15年の損益計算書には、製造原価の材料費のデータが掲載されていません。ですから、変動費の把握ができないので、ここでは便宜的に12年度の変動費割合(78%)を用います。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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