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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

 また、12年度における運搬費を除く販売費及び一般管理費は104,952百万円に対し、15年度のそれは130,662百万円でしたので、固定費が25,710百万円増加していることがわかるので、これを予め組み込んで、固定費を313,251百万円(=287,541百万円+25,710百万円)としたうえで15年の損益をシミュレーションすると、下記のとおりとなります。

三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字の画像4

 このシミュレーションによれば、営業利益は84,079百万円になりました。しかし、現実の三菱自の営業利益は61,641百万円でしたので、現実の業績と上記のシミュレーションには200億円ほどの誤差が生じています。

 このように、概ね3割ほどの誤差が生じることを承知の上で、今回の不正発覚による「44.9%の需要減」がどれほどのインパクトをもたらすかをシミュレーションすると、下記のとおりになります。

三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字の画像5

 つまり、売上高が44.9%減少すれば、粗利益も同じく減少し、215,104百万円になると予想されます。それより、固定費を差し引いて単純計算をすると、98,147百万円の赤字となります。

巨額の営業赤字は避けられず

 もちろんこれはざっくりとした見込みの計算であり、1~3割程度の誤差は避けられません。ということは、現実の営業赤字の見込み額は、700億円~1200億円程度ではないかと見込まれます。これは、あくまでも外部データにもとづく筆者の見込みです。現実には、三菱自ではもっと緻密な見込みが行われているはずです。とはいえ、44.9%の販売減が年間ベースで生じた場合には、巨額の営業赤字が避けられないことには変わりがないはずです。

 これは大変なことです。その需要減が仮に短期間で終息するならば、三菱自の経営はそこそこの穴が開く程度で終わるでしょうが、もし中期化(3年程度)もしくは長期化(5年以上)するようであれば、企業経営自体が不可能になりかねません。

 しかも、このシミュレーションは、今回の不祥事による民事訴訟等の賠償負担を織り込んでいません。あくまでも、本稿執筆時点における需要減のみを考慮した業績変動の試算です。ですから、これにつぎのような賠償負担を織り込むとすれば、さらに大きな損失が生じることが想定されます。

1.ユーザーが余分に払ったガソリン代
2.中古価格の下落による損失
3.エコカー減税返納分
4.供給先である日産自動車の車両保有者に対するガソリン差額、ディーラーの軽販売機会の喪失による損失の補償
5.部品メーカーの休業補償

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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